ソーシャルゲーム運営地獄


実際に関係者から聞いた話なのだが、いま、底辺のソーシャルゲーム会社は大変なことになっているらしい。底辺じゃない会社もそれなりに大変なものかも知れないが、底辺の会社はそれどころの騒ぎではないようだ。


まず、プログラマーの力量に合っていない。


ソーシャルゲーム(の開発を)舐めんな」みたいな話は大手の開発会社のプログラマーからよく聞くが、人数がある日突然何万ユーザーも増える。このへんの流入する人数の調整が利かない。


もともと何十万人規模の接続をさばくには、MMORPGなどのオンラインゲームよりもシビアであり(普通、MMORPGでもワールドがわかれていて、1つのサーバーの常時接続人数は数千人規模に収まるので)、大人数になったときにうまくスケールアウトするように設計するためには、ゲームシステム自体がそのへんを考慮してうまく練られていないといけない。


ところが、底辺ゲーム会社だと、社長がそのへんの理解に乏しいもんだから、「GREEのこのゲーム、パクって作ってよ。ポチポチ(クリックするだけのゲームを蔑んでそう呼ぶ)だから簡単っしょ?」みたいな感じで力量のないプログラマーに振るわけだ。


おまけに、プログラマーも力量が不足していてどこがどう大変になるのかわかっていない。本来ならKVS(Key-Value Store)を使うべきところをRDBで書いてたりする。もちろん、少ない接続人数ならばそれで動くかも知れないが、人数が増えてくるとサーバー機能自体が麻痺してしまうことは容易に想像がつく。しかし、彼らは実際にゲームの運営が始まるまでそのことに気づかない。


こんな状況でゲームの運営がいざ始まるのだが、運営開始から数週間ぐらいすると自ずとネットワーク障害でゲームにならなくなる。


そうするとユーザーの不満が爆発するので、運営としてはお詫びの品として連日のように、ネットワーク障害の補填のためのアイテムをユーザーにプレゼントし続ける。


運営スタッフはユーザーのクレーム応対に追われ、日々お詫びの文面を作成し、補填アイテムを送ったり、ネットワーク障害の程度を確認したり、2chのそのゲームのスレを定期的にチェックしてそこに書かれているバグ報告をプログラマーに伝えたり、そこに書かれている要望のうち運営として出来そうなことをやったりする作業ばかりになる。こうなってくると(ゲーム内の)イベントを企画するどころの話ではなくなり、運営スタッフは疲弊してしまう。


かと言ってプログラマー側も、もともとそんな大量のアクセスをさばくプログラムを書く能力などなく、ゲームデザインGREEのなんとかゲームのパクリだから、ゲームデザイナー自体を雇ってなくて、どうボトルネックを解消するゲームデザインに修正していいか考えたり決めてくれたりする人がいないなかで社長からは「サーバー重いから改善してくれないと運営スタッフが潰れちゃうよ」などと言われ、連日連夜の泊まり込み作業となる。


ゲームのほうはネットワーク障害でほとんどゲームとならず、あまりの重さにやめていくユーザーが続出。もともとソーシャルゲームの運営開始のときというのは、「オープン記念で1万円分のアイテムを無料プレゼント」など、パチンコの新装開店のように赤字覚悟で課金アイテムを無料で放出しており、利益などないのが普通である。


連日の補填アイテムの大放出により、ユーザーはほとんど誰も課金しなくて、売上が低迷しつづけるなか、運営を続けていかなくてはならない。会社としても地獄だ。


そして社長は担当プログラマーにこう言う。


「ほら、グラフィッカーやサウンドの人がみんな頑張って期日通りに納品してくれたのに、プログラムがしっかりしていないために売上が立たないよ。みんなの頑張りを無駄にしないで!」


こうしてプログラマーの会社への泊まり込みは続き、運営はクレーム応対で疲弊し、売上が伸びず社長は首をくくるしかないという状況に追い込まれるわけである。


社長のマネージメントが悪いとは思うが、ともかく、プログラマーが実力不足であるために会社全体を巻き込み、そしてそのゲームのプレイヤーにも多大な迷惑がかかるという現代の地獄絵図のようになっている。



「底辺のソーシャルゲーム会社は大変なんだな」と思うと同時に、技術者としての実力不足により取引先に迷惑をかけるようなことがないようにしようという自戒の意味をこめて、この記事を書き残しておく次第である。