高難度化するボカロ楽譜


前回、同人音楽の演奏難度が上がっている件について書いたが、その流れはボカロ方面にも波及しそうなのでちょっと流れを追ってみたい。


前回記事)
最近、同人音楽の演奏難度が上がっている件
http://d.hatena.ne.jp/yaneurao/20130901#p1


ピアノ・ソロ ボカロのヒット・ソングあつめてみた。


私は以前、「ミクさんは本当にエコシステムを形成するのか?」*1という記事のなかで、市販されているボカロ楽譜(ピアノ譜)は「ヤマハミュージックメディア」「デプロMP」から出版されているものしか選択肢がないと書いたが、その翌月、シンコーミュージックから『ピアノ・ソロ ボカロのヒット・ソングあつめてみた』という楽譜を発売するとアナウンスがあり、8月28日に発売となった。


月刊ピアノ 2013年9月号


ちなみに、私の同記事で「(まらしぃさんの月刊ピアノでの連載は)同じ号に掲載されている譜面自体は別の人が採譜したものなのが残念なところ。まらしぃさんらが採譜(アレンジ)したものを掲載するわけにはいかないのだろうか…。」と書いたところ、8月20日発売の『月刊ピアノ 2013年9月号』ではまらしぃさんの自作曲『アマツキツネ(まらしぃ feat. 鏡音リン) 』の楽譜が掲載されることになった。まらしぃさんが自分で書かれた楽譜ではないようだが、なんにしてもめでたい。


以上の2つの出来事は本ブログと無関係なのかも知れないが、時期的に考えて全く無縁とも思いがたい。(シンコーミュージックはいままでボカロ楽譜は一度も出したことがなかったので。) まあともかく、ブログでなんでも喚き散らしておけば(その記事に10万PVぐらいあれば)、そのうちなんとかなるというメソッドである。


話が逸れたが、このシンコーミュージックがいまさらながら出してきたボカロ楽譜の難度はどうなのか。


私が全曲チェックしてみたところ、難度はアニソン的には中級の上か上級の下ぐらい。クラオタ的には中級の下ぐらい。(ツェルニー30番程度) バイエル卒業程度で弾ける楽譜が多いなか、なかなか大胆な決断をしていると思う。


また、ヤマハミュージックメディアでは難しすぎるリフなどは難度を調整するためか、省略してあったりするのだが、この楽譜ではそれがない。かと言って原曲らしさを忠実に再現しているかというと、必ずしもそうでもなく、メロディパートを左手に持ってくる部分があったりして、上級者が好みそうなアレンジだと言えると思う。楽譜も読みやすく、誰が採譜しているのかは知らないが、採譜している人の能力は、ヤマハやデプロのボカロ譜より断然上だと感じた。


『深海少女』、『右肩の蝶』とか『ローリンガール』とか、他の出版社ではいままでピアノ譜が出ていなかった曲がいくつもあるのも素晴らしい。


ただ、スタンダードな、そして教育的な楽譜という意味ではヤマハのほうに軍配があがる。デプロのほうはどうかって? G(♭9)の♭9(♭ラ)を#ソで表記しちゃうような糞譜面とか、コードがCmなのにミの♭忘れているだとか、なんかコード自体も間違っているところとかあるだとか…、いろいろ悩ましいのだが、そういうミスさえなければ(たぶん編集側のチェックが甘いのが問題)、わりと弾きやすく、原曲っぽいものもあるのでこれはこれで良しだと思う。


あと、同人音楽が高難度譜面化するきっかけとして前回取り上げた「紅蓮の弓矢」の動画を再掲しておく。


進撃の巨人 / Attack on Titan】紅蓮の弓矢(フル) / Guren no Yumiya (full)【Piano】


この動画の奏者だが、私はどこかで見たことあるなぁと思っていたのだけど、ふと思い出したので書いておく。


この人はYouTubeの別のアカウントを持っていて、以下の動画と同一人物である。ブログに書かれているプロフィールによると音大のピアノ科卒で仕事で音楽活動をされているらしい。


報道ステーション OP I am ( 耳コピ & ピアノ )


このクラスの人たちが同人音楽とかアニソンとかボカロ方面に進出してくると全体的なレベルが著しく引き上げられる。


初音ミク/Miku Hatsune】え?あぁ、そう。/E? Aa,Sou.【Piano】



こういうのを目の当たりにすると、もはやアマチュアがおいそれと「演奏してみた」動画など恐れ多くてアップできない。


私も去年ぐらいにいっちょピアノの演奏動画でもあげたろかいと思ってこつこつ撮影の準備とかしてたのだが、上のような動画を見ると、あちらが高級イタリア料理店の一流シェフだとしたら、こちらは、その店の前に図々しくもたこ焼きと焼きそばを売りに来てる屋台のおっさんさながらである。


私としても、これ以上、黒歴史の量産に勤しむわけにはいかない。