Gradiusに関する4つの秘話


コナミグラディウス(1985年)は、私が学生のころ、ハマりにハマったゲームの一つで、非常に思い出深いものであるが、SNS全盛の時代に突入したせいか、過去のゲームについてツイートなどで関係者の証言を得やすくなってきたせいで、当時は気付かなかったことがわかるようになってきた。ゲーム史上、意味のある内容も多数あり、私の胸のうちにしまっておくにはもったいないので、ここに書き散らす。



■ 1つ目 ザブは2秒前の自機を狙わない?


「ザブは出現後、2秒前の自機(のあった位置)に向かって移動する」というのは、当時ゲーメストグラディウスの攻略記事を書いていためぞん一刻氏(スコアネーム)こと高見明成氏の記事にある。グラディウスの1000万点プレイヤーの間でも長らく信じられていたし、1000万点プレイヤーの一人である私も当然そう信じていた。


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僕はグラディウスで頭がさらにおかしくなった
http://d.hatena.ne.jp/yaneurao/20100122#p1


ところが、上の記事を書いたあと、元ゲーメストの編集長である石井ぜんじ氏からこの部分に対して「そういや、この2秒前ってめぞん(一刻氏)が言い出したんだと思うけど、本当なのかな」というツッコミが入った。


当時は撮影機材等がなかったのでそんなに正確な計測はできなかったので、もしかしたら違うのかも知れない。私は時間ができたら検証したいと思っている。



■ 2つ目 めぞん一刻氏がグロブダー1コインクリアしていた件


めぞん一刻氏は、グラディウスの1000万点プレイヤーなら知らない人はいないというぐらい有名なのだが、同じ1000万点プレイヤーでも彼の攻略記事を見てそれをなぞるようにゲームを攻略しているだけの1000万点プレイヤーと、攻略法そのものを自分で作り出す彼とでは一線を画するものがあった。(もちろん、1000万点プレイヤーと普通のプレイヤーとの間にも大きな溝があるが、それはまた別の話だ。)


「ループするゲームは終わらなくなってからが始まりである」とは彼がアルカディア誌に書いた格言であるが、いかに安全にクリアするか、(逆に)いかに点数を稼ぐか、そして(ミスしたあと)いかに立て直すかという点において、先駆的な考えの持ち主であったと言える。


ちなみに、めぞん一刻氏は2002年に逝去している。


そんな彼がどれだけの天才的なゲームプレイヤーであったかを示す傍証として、『グロブダー』(GROBDA/ナムコ/1984年。遠藤雅伸氏のチームが製作)の1コインクリアが挙げられる。


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グロブダーは超絶難度のゲームであり、ノーコンティニュー、ステージセレクトなしでのクリアはスコア集計当初、5人しかいなかった。ちなみに、上の動画、基板の難度設定はイージーだろう。当時のハイスコア集計もイージーで行われていた。


ちなみに、このゲームを難度ノーマルでクリアした人は長らくおらず、ノーマルでのクリアは不可能だと言われていたのだが、2008年(まさに24年ごし!)にSPREAM-REI氏が前人未到のクリアを達成したらしい。



■ 3つ目 山下章氏のグラディウスの演奏は何が間違っていたのか?


BASICマガジン誌、コンプティーク誌などでPCゲームの攻略記事を長らく掲載していたゲームライターの山下章氏。当時はまだゲームライターという職業が定着していなかった時代なので、山下章氏は先駆的であり、かつカリスマ性があった。


パソコン関連の情報を扱うTV番組『パソコンサンデー』(1982年3月〜1989年6月放送)にゲーム評論家として登場していて、ある日の放送で山下氏自身のお宅に訪問、みたいな内容があった。


そこで颯爽とグラディウスの曲をシンセ(?)で演奏する山下氏。確か曲は逆火山(Stage 4)のテーマだったと思う。翌月発売のBAISCマガジン誌でGORRY氏(後藤 浩昭氏。当時FM音源ドライバーなどを書いていた、サウンド系では神様のようなプログラマー)から、「三連符のところ間違っている。演奏するならちゃんとして欲しかった」と言われたと山下章氏が書いていた。そして「GORRY師匠すみません」とも書いていた。(と思う。うろ覚え。)


私は当時、この記事をなんのこっちゃいなと思っていたのだが、その後、なんとなく意味がわかったのでここに書いておく。



引用元 : ニコニコ物置@にュウ( https://sites.google.com/site/niusound/sheet )


私が赤文字で示したように、付点八分(の長さ)が2回続いて、そのあと八分が1回くるという歯切れの良い「3:3:2」のリズム・パターンがこの曲では多用してあるのだが、一番の盛り上がりである16分のフレーズの直前だけが、深呼吸でもするかのように三連符(ニ拍三連)となっている。(上の楽譜で「1 1 1」と書いてある部分) ここを誤って山下氏は「3:3:2」のリズムで演奏していたのではないかと思う。


ちなみに、上の楽譜のリズムが正しいようで(サントラ asin:B000063EDS に付属の楽譜でも確認)、インターネット上に公開されている個人が採譜した楽譜だと「3:3:2」のところをニ拍三連にしてある楽譜をよく見かけるがおそらく誤りであろう。


※ ただ、公式の楽譜が正しいとは限らない。グラディウス1の曲を作ったのは当時コナミでアルバイトしていた東野美紀(現:石川美紀)さんだが、楽譜で納品しており、それをデータとして打ち込んだのは別の人である。なのでデータとして打ち込む過程でやや手直ししている可能性もある。例えば、アーケード版のゲーム中に流れてくる曲が、公式楽譜と異なる部分が何箇所かある。これについては機を改めて書く。しかし、上の楽譜のリズムパターンはこれでアーケード版通りだと思う。



■ 4つ目 X1turbo版グラディウスは存在した!?


アーケード版のグラディウスがリリースされたころ(1985年ぐらい)から、パソコン版のグラディウスを趣味で作る人がいた。


次の動画はOh!MZ誌発表のS-OSという環境で動くプログラムとして投稿しようとしていた人のグラディウスの動画である。ちなみにこのS-OSはグラフィックスは使えず、アスキーアートを駆使したゲームになるのだが、そこがまた味があって素晴らしい。


S-OS”SWORD”版グラディウス
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SHARPのパソコンX1(1982年発売)にもグラディウスは移植された(1986年)が、アーケード版と比べるとかなり出来が悪く(それでも頑張っているほうだとは思うが…)、自作しようという気運が高まった。


そんななか、Oh!X誌(前述のOh!MZ誌の後継誌)にX1turbo用のグラディウススクリーンショットが掲載されて大変話題になった。もしかして本誌上で発表されるのかと思っていたら、のちに別の号で再度グラディウススクリーンショットが掲載されたときは「15パズルです」のように注記があったので、ほとんどの読者は「あれは15パズルだったんだ…」と思った。私も掲載当時はそう思っていた。


ところが、そこから数年して、Oh!X誌に掲載されていたうちの前者はどうやらパズルではなく正真正銘のグラディウス(の同人版)であるという話をOh!X誌のライターをしていた人から私は聞いた。ただ、その時点では噂レベルでしかなく、私は長らく半信半疑であったが、現代になっていよいよその真実が明かされた。



https://twitter.com/openspc/status/134314428400279552


こういう裏話のような話がツイートでさらっとつぶやかれ、そして誰にもふぁぼられずに流れていくのがなんとも現代っぽいが。


ではこのグラディウスを開発したのは一体誰なのか?Wikipediaにはこんな記述がある。



グラディウス_(ゲーム) -- Wikipedia


この文を見てわかった人もいるだろう。そう。このX1turbo版を手がけたのは、のちにグランツーリスモなどのプログラムを手がける横内威至氏である。


しかしWikipediaのくせに何故、出典も書かずに、かつ上のようにまわりくどい書き方をしてあるのかわけがわからないが、ともかく後世に名を残しているような当時のゲームプログラマーというのは名作ゲームを自分の手で1から作り直すことによってゲームプログラミングの極意を体得してきたわけである。