大学入試


私自身、大学受験にはずいぶん苦しめられた。ちょうど第二次ベビーブームの世代で、受験生が多かったこともあるし、ちょうどバブルがはじけたころだったので、就職組というのがほとんどおらず、ほとんどの生徒が大学進学を希望したこともある。ともかく競争率が高かった。


おまけに私は当時は偏差値が高い大学がいい大学だと思っていたし、偏差値の高い大学でないと学べないことがあると思っていた。それは全くの間違いだった。もし本当に勉強する気があるのならば大学に行く必要すらないと思う。たとえば大学の学費の分だけ書籍を買えば、どれだけ凄い質の勉強が出来るだろうか。しかし、そのことに気づいたのは、もっとあとになってからだ。


私の尊敬する詩人の寺山修司はかつて「振り返るな、振り返るな、後ろにあるのは荒野ばかりだ」と言った。その通りだと思う。私は大学受験のときに東大に入りたいがため、何度も足踏みし、テキトウな大学に入ったあとも、自分は仮面浪人のつもりで居た。私は何度も何度も後ろを振り返った。確かに後ろには“荒野”しかなかった。だけどその後ろにある荒野を私は振りかえらずにはいられなかった。自分には当時、“荒野”が、豊穣な沃土に見えていた。大学受験が一種の通過儀礼であり、そこを“正しい形”で経由しないと自分は大人になれないのとばかり思っていた。ひどい勘違いだった。でも大真面目にそういう勘違いをしていた。


いま振り返ってみても、当時の自分の生き方をあざ笑うことは出来ない。また、自分の目標とする大学へ行くために“足踏み”している人を「馬鹿だなー」とは思うものの、心のどこかでリスペクトしているかも知れない。