エロゲー製作は大変ナリよ(6)

結局のところこの状況を引き起こした主な原因として考えられるのは、


1)ハードウェアのスペックが非常に低かった(ので高度なプログラミングを要求された)
2)エロゲーが売れなかった(ので十分な予算が確保できなかった)
3)彼らプログラマが比較的安い単価で働き続けた(ので少ない予算しかないのにエロゲーを作ろうと思う経営者が後を絶たなかった)
4)Windows95の出現でパソコン市場の規模が飛躍的に拡大すると予測されたのでエロゲー業界に参入しようと思う人が多かった。


である。


前述のように当時のエロゲーを振り返ってみるに非常に高度な技術とバッドノウハウの集積により成り立っていた。


うまく動かないハードがあるとユーザーからレポートが来れば、そのビデオカードサウンドカード、マザーボード等を買ってきて動作検証するなんてことは極々当たり前のことであったし、私は自分の作っていたゲームライブラリ(yaneSDK1st/2nd)の権利について当時勤めていたゲーム会社にとやかく言われたくなかったので、そのようなハードを買うお金はすべて自腹であった。


「3Dのほうがエロゲーに比べて難しい技術が要求される」と世間で思われているフシがあるが実際はそうとも限らない。3Dのゲームというのは、3D表示がHAL(ハードウェア)で出来るグラフィックカードをユーザーが持っていることが大前提となるが、当時のエロゲーにおいてはそのような仮定は出来なかった。(そんな仮定が出来るなら比較にならないほど楽にコーディング出来るのに!)


当時の3Dのゲーム(GPUを使用せず、複雑な3D engineを実装しているわけでもない)とエロゲーとでは、私はエロゲーのほうがはるかに高度なプログラミングを要求されたと思う。世間では「やねうらお、3Dなんか全然出来ないじゃん」と思われてるかも知れないが、私の大学の卒業研究テーマ自体が物理シミュレーションとその視覚化だったのでもろに3Dを扱っていたし、だからこそ未踏ユースへの提出書類を査読したり(→id:yaneurao:20060823)出来るわけなのだが。


また、HALに頼れないということは、左右反転してキャラクタを表示するだけでも一苦労であり、現存しうるpixel formatすべてに対して左右反転ルーチンを書くというような気が遠くなるようなコーディングが必要だった。


以下、やねう掲示板より。


92 ナマエ:けんちゃん 2006/09/14(木) 09:31 [220.127.15.*] [MSIE6.0/WindowsXP]

やねさんのブログに書いてた GTL って、むかーしに ikeuchi(demo.and.or.jp)
って方が公開してた奴とは無関係なんですか?

久しぶりに GTL の言葉を聞いて MegaDemo 技術を思い出したのでした。
shi3z さんとか ^C さんとか gridman (笑)さんとか。


yaneSDK2ndのソースを見てもらえればわかるように私のGTLのソースは私が1から起こしている。しかし当時、池内さんのGTLをかなり参考にさせていただいた。


池内さんのGTLはC++でfunctorを使って書いてinline展開されることを期待し、それを複数のピクセルフォーマットに対するエフェクトに応用していた。


私はそれを異なるピクセル間の転送に利用したり、software packed演算を用いて加色合成が出来たりするように発展させた。またsoftware packed演算の分野においていくつかの成果を出し名を残した。(リンク先はGCA/DGCAの作者のページ)


(つづく)