夢と忘却のメカニズム


DRAM電荷が完全になくならないうちに充電を繰り返すことによって記憶を保持している。この記憶を保持させるための充電のことをリフレッシュと呼ぶ。


人間の記憶も一定間隔ごとにリフレッシュ(この文脈では記憶を呼び戻すこと)しないと忘却する。使わない神経回路網は自然に淘汰される。これが、医学的に見てどれくらい真実なのかは知らないが、とりあえずそういう前提で話を進める。


私のサラリーマン時代に同期入社したA君が私にメールをしてきた。彼は、営業マンで、私の名前をフルネームで覚えていて、それでネットで検索してたまたま見つかったのだそうだ。失礼ながら私は彼の名前なんて頭の片隅にも無かった。彼からのメールを見て、ああそんな奴もいたかなぁと思った次第だ。


何故、彼は私のフルネームを覚えていたのだろう。営業職だから、人の名前を覚えなければならない機会は多く、有機的に関連付けて覚えるから、毎日のように記憶のリフレッシュが行われるのではないかと思う。


では私は何故彼の名前を思い出せなかったのだろう?そもそも私は人の名前はすぐに忘れてしまう。昔の恋人の名前すら思い出せないことがある。なぜそうなのかと考えていたら、普通は実生活のなかで思い出さなくとも、夢で昔のことを見たりして、それが記憶のリフレッシュになっているのではないかと思うんだ。


私の場合、見る夢がいささか特殊で偏向があって、たいていは寝る前に考えていた現在抱えている問題を夢の中でも考えている。そのせいか、過去の夢はほとんどと言っていいほど見ない。これが私が人の名前を長期的に覚えていられないことと関係するような気がする。


また、寝ている間に夢を見ないという人はもしかしたら実生活で使わないすべてのことをいずれは忘れていくのかも知れない…と思った。