森山塔のこと


そのころの私はエロ漫画を相当読んだような覚えがある。文学部の友達が私にたくさん貸してくれた。それゆえ、単にセックスをしてハッピーエンドというようなストーリーよりは、もっと文学的な、よりセクシャルで、セックスをしてもハッピーエンドにならない、むしろ取り返しがつかなくなるようなそういうストーリーを彼は好んだし、そういった作品ばかりを私に貸してくれた。


なかでも森山塔(=山本直樹)はその最右翼だった。その実力を見せつけるかのように森山作品のうち「あさってDance (1)」や「BLUE」などが次々と映画化された。知り合いの女の子がアイドルになって手の届かないところに行ってしまうみたいで、私は手放しでは喜べなかった。


知らない人にこれらの作品を一言で説明するのは難しいが、アマゾンの『BLUE』のレビューから引用するとこうだ。

表題の『BLUE』を筆頭にひたすらせつなく、取り返しがつかない青年期を中心に描いた作品集

「なんだかなぁ」とこの感情をどこにもっていけばいいのかわからない、心臓を鷲掴みされたような息苦しさを感じる。

男の独占欲による支配とそれをするりと手からこぼれ落ちる女の性欲
都会への憧れと田舎での焦燥感、しかし田舎に囚われた去勢された精神

どうしようもない、行き場のない閉塞的で現実的な日常が描かれた作品集