僕はドルアーガで頭がおかしくなった


やねうらお』の名前の由来(→ http://d.hatena.ne.jp/yaneurao/20081222 )に出てきたH君が中学生の私に教えてくれたゲームは、「タイムギャル」以外にも「ドルアーガの塔」というのがある。


ドルアーガの塔」は、「ゼビウス」を作った遠藤雅伸氏の作ったゲームで、60階のダンジョンから構成されるゲームである。それぞれのフロアには宝箱が出現するのだが、その宝箱の出現にはフロアごとに条件が定められており、その条件を満たさないと宝箱は出現しない。


ゲーム発売当時、宝箱の出現条件は知られていなかったのだが、H君は独自に調べ上げ、一覧表にして大事に持っていた。


ある日、「これ覚えておくとええで」と彼はその大事な表を私に貸してくれた。私は、「凄いものを貸してもらった!」と大喜びで、さっそくその表を覚えることにした。本当は、ゲームの進行上不要な(取る必要のない)宝箱もあるのだが、その表からはわからないので、ともかく全部覚えることにした。


遠藤氏によると、フロアが60階で構成されているのは、サンシャイン60(当時日本で一番高いビル)にちなんであるそうなのだが、私にとってその60という数字は1分間の秒数でもあった。


だから、学校で教室の黒板の左につり下げられている丸い時計を見ながら秒針が1秒1秒を刻むごとにそのフロアの宝物の出現条件を心の中で復唱した。「緑スライム3匹倒す。黒スライム2匹倒す。ブルーナイトどちらか倒す。…」 それは私にとってのドルアーガ遊びだった。


興味のない授業の時間はずっとその遊びをしていた。時計の秒針さえあれば、私は何時間でもドルアーガ遊びが出来たのである。


そのあと、ファミコン版のドルアーガが発売された。ファミコン版のドルアーガには、裏ドルアーガという、宝箱の出現法則が異なるモードがあった。ファミコンは持ってないし、ファミコンドルアーガをやる予定もなかったけど、H君は「これも覚えておくといいよ」とまたもや出現法則を書いた表を私に貸してくれた。私は、それも60階分すべて同じようにして時計の秒針を見ながら復唱できるまで覚えたのである。


その後遺症で、いまだに時計を見ると自然とこの宝物の出現条件が頭に浮かぶ。時計どころか数字を見てもそうだ。


例えば、私は143783という数字を見ると「時間5000まで待つ、ゴーストを全滅させローパーと交差、スライム・ウィザードを交互に倒し全滅させる」と思い浮かぶ。(83は83 - 60 = 23なので、裏ドルアーガのフロア23の宝物の出現条件が頭に浮かぶ)


これは生活する上で困ることもあるのだが、結局、その症状はなおらないままいまに至る。
まあ、長い数字の列が簡単に覚えられて便利なこともあるのだが。


ちなみに、私はアーケード版のドルアーガはいつもH君がプレイしているのを見ているだけだったので自分では一度もやったことはないし、ましてファミコン版は見たこともない。私にとって、「ドルアーガの塔」とは時計の秒針を見ながら宝物の出現条件を復唱するゲームであり、それこそが「ドルアーガの塔」のすべてだったのだ。