電王戦第二局実況用


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[3/22 7:00] 電王戦第二局を実況します。ただやねうら王の対戦相手である佐藤紳哉六段と同じ場所で私は対局のためのPCを操作するはずなので、対局の邪魔になるといけないので、休憩時間など空き時間を見つけて更新していこうかと思います。(あまり空き時間はないのかも知れません…)


ドワンゴさんから聞いている話は、「PCへの指し手入力は開発者自らが行なう」ということです。そのあとのコンピューター側の指し手を指す部分は自動化されているようです。指し手入力も自動化して欲しかったような気がしますが、時間がなかったのでしょうか。


また、本来は開発者は7時に来て、動作チェックのための時間を1時間半ぐらい与えられているようですが、今回の騒ぎがあったところなので、あまり時間をかけて「また、やねうらおが何かやってやがる」みたいな話になってもいけませんので、そのへんドワンゴの担当者の方と相談した結果、ドワンゴの方が旧バージョンに戻して、最初に佐藤紳哉六段にPCをお渡ししたときの思考設定にしていただける(私はPCに触れずに横でそれを見ている)ということになっています。


ですので、対局後、「練習のときと指し手が違う」「やねうらお、また差し替えやがったのでは?」みたいな疑念の余地はありません。(局中学習自体はオンなので、若干変化しうるのはもとからの仕様ですが) そんなわけでそのへんは安心して(?)ご覧いただければと思います。


私は8時に両国国技館入りなのそろそろ行く準備をします。


[8:39] やねうら王の対局のセットアップ(by ドワンゴの人)が終わりました。9:30まで時間があるのでいま控室でこの文章を書いています。


やねうら王の動作自体はあまりきちんと確認できていませんがやねうら王が5手目まで指せたので良しとしました。4手目として定跡から外れた手を指した想定で動かしたとき、やねうら王側が6分ほど考えました。フリーズしているのかとひやひやしましたが、うまく動いているようです。しかし序盤でこんなに使うとおそらく100手目付近で1分将棋になります。この思考時間設定ですと今日の対局、長引くと思います。やねうら王がフリーズしてポッキリ負けたりしなければ、ですが。


また、やねうら王側の持ち時間設定は安全を見て4時間45分 + 秒読み50秒設定になっています。これは電王トーナメント終了後に「この設定でお願いします」と私がテキストファイルでドワンゴの担当者に渡した設定ですので、この部分は変更できないです。


[8:50] 電王手くんの仕組みが少しわかりました。将棋所の思考エンジンとして電王手くんの実行ファイルを登録し、この実行ファイルが思考エンジンとの仲介をするようです。(技術的にはproxyとかbridgeとか呼ばれる類のもの) 思考エンジン側からの指し手(bestmove XXXX)を、見つけたら、それをネットワーク越しにサーバーに伝えるということのようです。


ということは、人間側の指し手も自動入力しようと考えた場合、人間側の指し手を入力してくれるだけの実行ファイル(将棋所からは思考エンジンとして見えるもの)が別途必要だということのようです。(今回はそれは作ってないらしく、人間が手作業で人間側の指し手を将棋所に入力します)


[8:55] 対局中の空き時間に実況しようかと思っていたのですが、ドワンゴの担当者いわく、「前回伊藤さんが、対局中にtwitterされてて、炎上と言いますか、ちょっと騒ぎになりましたので…(やめたほうがいいですよ)」とのことでした。でしたか…。


ということで私の空き時間(控室にいる時間)は、昼休憩12:00〜13:00と夕休憩(17:00〜17:30)しかなくて、そのタイミングでしか更新できないようです。期待してくださっていた皆さん、すみません。


エルグランド > 佐藤6段の自宅におしかけた時に対局データでも取ったんですかね?


私の説明不足でしたが、やねうら王には局中学習の機能もありまして、以前一度でも考えた指し手は即指しする、みたいな機能となっています。(これで負けまで一直線にハマるといけないので最大で50手目までという設定にしてあります。) やねうら王側の応手に要した時間を見れば、この局中学習の進行であるかどうかはわかります。


このようにやねうら王では経験した局面に関して即指しするので、その分中盤に時間が持ち越せて、中盤の思考時間が増えた結果、前の対局とは指し手に変化が生じる場合があるという意味です。


またPC内のデータは何ひとつUSBメモリのほうには移動させていないです。(実は、あの日、日本将棋連盟の方が立ち会われていて、差し替え作業に関しても後ろでご覧になられていました。)


[9:05] アンチコンピューター将棋戦略について。コンピューター将棋が入玉将棋に弱いのは既知の事実である。弱い理由は、入玉棋譜があまりなく、棋譜からの学習では正しく学習できていないからである。そこでトップ付近の将棋ソフトは入玉に関係するような評価項目を手で調整しているのが普通である。(ドーピングと言う)


やねうら王はそのへん何の対策もしていないのでモロに入玉が弱く(これは新しいバージョンでも同じ)、入玉将棋に関しては素人同然である。


そういう意味では、プロが本当に勝ちだけを考えるなら、入玉になりにくい戦型(対抗形=居飛車 vs 振り飛車 のように、先手と後手の玉が盤面の右側なら右側、左側なら左側というように向かい合っている形)は作戦として損なのである。


ところが、電王戦第一局では、菅井五段は対抗形を選んだ。作戦としては損であろうと、振り飛車党の自分の信念を曲げてまで勝ちには行きたくなかったのだろう。私はそこにプロとしての矜持のようなものを感じずにはいられなかった。また、いまの習甦と菅井五段とでは実力的には五分ぐらいだから、菅井五段としても正面からぶつかり合ってみたかったのだと思う。


これが、実力が離れていれば、右玉から手待ちをしつつ、端をからめて入玉するなど、最初から入玉狙いにしたほうが勝率は上がる。(R200ぐらい離れていてもこの作戦であれば五分に戦える) そういう意味では、米長先生の、対ボンクラーズ戦は、実に先見の明があったと言える。あの米長先生の先見性が世間的に再評価されるのには、まだあと2,3年かかるだろうが、2,3年後の電王戦では米長先生のことを将棋ファン達は必ず思い出すことになるだろう。


[9:25] 開発者的には、自分のソフトを自分の息子か娘のように思っている。(私は娘だと思っている)「馬鹿な子ほど可愛い」という言葉があるが、バグがあろうと、その気持ちは変わるものではなく、むしろバグがあるからこそ、可愛くて仕方がないのである。


今日のやねうら王は皆さんもご承知の通り、ひどいバグ持ちではあるが、どうか、そのことを念頭におき、「自分の病弱な妹がマラソンで最後まで完走できるか」みたいなシチュエーションを想像しながらご覧いただければより楽しめるのではないかと思う。そして、この病弱な妹と対峙する佐藤紳哉六段が妹のことをどう受け止めてくださるのか。そういう温かい気持ちでこの電王戦第二局を見守っていただけたらと思う。


[12:30] 午前中までのあらすじ。やねうら王側の初手16歩。私はこの指し手に度肝を抜かれた。というのも定跡データベースに登録されているのは76歩(出現頻度80%)、84歩(18%)、56歩(1%)であり、16歩は0.1%である。定跡選択は乱数だが、出現頻度に比例するようになっており、この千分の一をこの大一番でやねうら王は引き当てた。佐藤紳哉六段も初手からいきなり未経験の局面だったのではないかと想像する。


その後いろいろあって、9手目までがやねうら王側は定跡。11手目までからは局中学習定跡にもhitしていないことから、少なくともこの時点で貸出時に経験していない局面であることは間違いない。いきなりのガチンコ勝負である。


運良くそのように局中学習・局後学習が絡む局面は回避できたので、それ絡みでいきなりバグって即対局終了という惨事は回避できた。一つ目の峠を超えたことに私はとても安堵している。


午前中終了時の局面のほうは、持久戦模様で、またプロ的にはよくある局面だと思うし(プロ側の経験が生きる展開だし)、振り飛車側(やねうら王側)がやや作戦負けかなと思う。でもやねうら王にしては上出来。


[12:35] ツツカナの一丸さんが応援に私の控室に来てくださいました!


一丸さん「今年はお昼、豪華ですね。去年は900円(?)のカツ丼だったんですけどね。」


ちなみに今回のお昼ごはんは3000円前後のお弁当らしいです。


対局開始前に、「おやつは選べない」とドワンゴの担当者に聞いたことを一丸さんにお伝えしたら一丸さん、めちゃくちゃ残念がっていました。そ、、そんなにおやつ選びたかったですか…。


[12:40] 11:55から昼食休憩らしく、佐藤紳哉六段の手番で昼食休憩に突入。私はやねうら王の手番で(思考中に)昼食休憩に入るのは損だと思っていた。(やねうら王は6分ほどで指してしまい、そのあと人間側が考える時間があることになるので)


だから、昼食休憩の6分以上前に佐藤紳哉六段が指された場合は、将棋所に人間の指し手をわざと入力せず(時間はチェスクロックによる計測なので、このとき昼食休憩に突入するまでやねうら王側の持ち時間を消費)、そのまま昼食休憩を迎えようと思っていた。そして、昼食休憩の終了10分前ぐらいの将棋所に人間側の指し手を入力し、考えさせようと思っていた。せこいかも知れないが、これは今回の電王戦で結構役に立つかも知れないテクニックだ。


kanoke > そういうルール内での工夫を語ると、まーた「ルールを曲解して反則紛いのことをしようとしてた」とか書きたてられますよ。


ありゃ。そうなのかな…。プロのタイトル戦でも封じ手という仕組みがあるので、電王戦にもそういう仕組みがあってもいいのかなと思ったりしまして。(要するに休憩時間が終わるまで、相手の最後の指し手はわからない、みたいな)


でたま > 24点法未対応の状態になっているのでしょうか?


未対応です。まあ、その場合、思考エンジンは27/28点で入玉勝ち宣言することになるわけですが、そうなった場合は、立会人による判定になるそうです。


名無し > 時間結構使ってますが作戦ですか?


作戦です。序盤中盤でいきなり悪くされてしまっては勝ち目がないので人間相手であるなら序中盤に重きをおいたほうが勝率は上がるのではないかという観点から、序中盤に湯水の如く使う設定になっています。しかし持久戦模様になると、序盤が長いため、この作戦は裏目に出ます。というか出てます。このあと、どうなることやら…。


[17:15] 封じ手問題、ドワンゴの担当者の方にルール上どうなっているのか確認しました。


・ルール上は明記していなくて申し訳ないのですが、基本的に人間が指したらすぐに将棋所に入力してください。
・記録係の「休憩時間に入りました」という合図とともに、サーバー側に指し手の信号を送らないスイッチを押しているので、休憩中にコンピューターが指しても、それが人間(対戦相手)にバレることはありません。
・前回、休憩時間に入った直後に電王手くんが指してしまったのは、そのボタンがギリギリ押せていなかったためです。


とのことだそうです。


[17:20]
・控室に、軽食(サンドイッチ弁当)が用意してありました。
・対局中、私の後ろの暖房器具がオフになって(8時間タイマー?)ずっと寒かったです><
・正座、慣れてないので足が麻痺してきました。そういやPonanzaの山本くんが、「(当日の正座のため)足が痛すぎて、翌日整体に行った」と言ってました。
・私は今回のやねうら王が動いているPCの時計の時刻を見ていたのですが、このPC、ネットワークには一切つながっていないので時刻合わせが出来ておらず、5分遅れています。「なぜ予定の5分前に休憩タイムになるのか」などと思ってましたが、間違いでした。


[17:22] 時間の使い方について。対戦相手の佐藤紳哉六段、86歩の仕掛けのときに40分以上時間を使われて、こんなに時間を使って大丈夫なのかと思っていましたが、昼と夕休憩もうまく活用され、実質的に持ち時間5時間+1時間+30分のような状態なんですね。


いまのコンピューター将棋は仕掛けの前にちゃんと考えるだとか、休憩時間をうまく使う、みたいなことは出来ないので、人間らしい、人間の良さが出た時間の使い方だと思います。


[17:25] やねうら王の評価値グラフはほぼ互角のままの推移しています。桂を端に成り捨てた辺りではやねうら王はやや悪いと見ていたようですが、その後の佐藤紳哉六段の25歩周辺で持ち直したような評価値となっています。でも、現局面は、ほぼ互角です。どちらが勝つにせよワンサイドになるのかと思っていましたが、予想に反して熱戦になってきました。やねうら王は序中盤に湯水の如く時間を使う作戦でしたが、それが功を奏したと言えるかも知れません。実に中盤の難所でいい具合に時間を使っています。


[22:40] 電王戦第二局終わりました。結果は皆さんのご存知の通りです。私は今日で燃え尽きたので、しばらくブログはお休みします。


そうそう。書き忘れてたのですが、佐藤紳哉六段とは控室が隣同士でした。控室から行けるトイレも同じところなので、朝、私がトイレから出ようとするとき佐藤紳哉六段がトイレに駆け込んできました。


私     「佐藤先生。この度は、大変ご迷惑おかけして申し訳なかったです!」
佐藤紳哉六段「お、、おう」(小便を急いでいてそれどころではない感じ)


…と、、、とりあえず、和解完了?!


[2014/3/24 19:50] 本対局の関連記事を追記します。


・速報


「第3回将棋電王戦」ソフト2連勝、佐藤六段「相手が強いというより私が弱い」(マイナビニュース)
http://news.mynavi.jp/news/2014/03/22/142/


[速報]棋電王戦第二局は95手まででコンピューターの勝利!!(週アスPLUS)
http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/208/208978/


第3回将棋電王戦 第二局「やねうら王vs佐藤紳哉六段」(Jの詰将棋ブログ)
http://j-tsume-shogi.seesaa.net/article/392413987.html


第3回電王戦第2局、やねうら王対佐藤伸哉六段(棋士はカワイイ!)
http://kishikawa.doorblog.jp/archives/37114652.html


・詳細


電王戦第2局は炎上を経てどうなったか ネタキャラ対決は「カツラ落ち」のガチンコ勝負に(ねとらぼ)
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1403/24/news072.html


佐藤六段に待ち受けていた光と闇「第3回将棋電王戦」第2局 -罠をかいくぐり最後に生き残ったのはどちらか(マイナビニュース)
http://news.mynavi.jp/articles/2014/03/26/denou2/


・観戦記


電王戦第二局、佐藤紳哉の本気の対局姿(ものぐさ将棋観戦ブログ)
http://blog.livedoor.jp/shogitygoo/archives/51935417.html


第三回 将棋電王戦 第2局(筆者・河口俊彦 将棋棋士七段)(ニコニコニュース)
http://news.nicovideo.jp/watch/nw1006844


電王戦第2局 佐藤紳哉六段とやねうら王の観戦記(山本一成とPonanzaの大冒険)
http://ponanza.hatenadiary.jp/entry/2014/03/28/171813



・番外編


第三回電王戦第2戦「やねうら王VS佐藤紳哉六段」について、あるいはやねうらおさんについて思うこと(土屋つかさのテクノロジーは今か無しか)
http://d.hatena.ne.jp/t_tutiya/20140323/1395557842