佐藤紳哉六段と会ってきました!


手塩にかけて育てた我が娘、もといやねうら王が毎晩悪いおじさんに陵辱打ち負かされていると聞いて、佐藤紳哉六段にお会いしてきました。


ニコニコ側の電王戦関係者は、Ponanzaの100万円企画で全員出払っていないらしく、「せっかくの機会なのに撮影できる人がいないかも」とドワンゴの人に言われていたのですが、PVの製作・撮影などを担当されている人を派遣していただき、なんとかPV用に収録していただくことが出来ました。そんなわけで、その様子が当日のPVなどどこかで使われると思います。


ちなみに、今週末・来週末ともにPonanzaの100万円企画だそうで、その次の週末から電王戦の第一局が始まるわけです。つまり、ニコニコの電王戦関係のスタッフはスケジュール的にPonanzaに独占されているわけです。「さすが、一成さん!(Ponanzaの作者) そこまで読んで、100万円を捨ててエルグランド(MVP賞)を取りに来たのか!」と思わずにはいられないわけです。いや、ほんと。


そもそも、今回の電王戦、開発者の出演機会は非常に少ないんです。対局後の記者会見で何か言うにしても、人間側が負けた場合、お通夜のような雰囲気になっていることは免れないわけですし、コンピューター側が負けたとしても「いや〜、旦那、強いでガンスね〜(手をすりすりしながら)」とか言うわけにもいかないんですよ!大盤解説ニコファーレからで、対局会場は離れた場所にあるのでニコファーレに行けませんし、今回は代理操作はナシのようで「対局会場で操作しててね!」みたいな話になっちょります。会場にインタビューは来ていただけるようなのですが、PCをポチポチやりながらのインタビューは気が気でないです。


そうなってくると、エルグランドが欲しければ、それ以外の場で出てポイントを稼がないといけないわけですが、Ponanzaのような企画を考え、公式放送にしてもらい、かつ、ニコニコの電王戦のスタッフを独占して、他の開発者の出演機会をなくすのは、見事な作戦です。もちろん、一成さんにはそんな悪意はないのでしょうけど、とりあえずそういう状況になっていました。これは、私も出遅れました。盤外の戦いがこれから始まるのかと思ったら、盤外の戦いはもう終わっておりました。残念です。


とりあえず、いまから将棋倶楽部24にやねうら王で参戦して、やねうら王最強伝説を築かねばなりません。(まあ、無理でしょうけど…) あと、3月22日当日は対戦の模様をブログで実況します!「ブログばかり更新してないで、対局に集中してあげて!」「長すぎて読む気がせんわ!」など皆様のたくさんのご声援お待ちしております。



そう言えば、電王戦の公式ガイドブックが出たんです。私も5ページも出てるんですけどね。本当は30ページ分ぐらいしゃべったんですけど、私の枠が5ページ分しかなくて5ページにされちゃいました。まあ、載らなかった分のことは当日ブログにでも書きます。



https://twitter.com/swkk/status/439766967658889216

この記事をアップして速攻、インタビューしていただいた記者の方からツッコミが入りました。最初は4ページだったのに、私がしゃべりすぎたために無理無理5ページにしていただいたようです。これは失礼しました。



さて、電王戦を楽しむ上で、皆さん、いくつか誤解があるようなのでここに書いておきますね。上のムックより大事な部分を引用します。


―――そして、プロ棋士にとってこれが一番大きいのですけれども、事前に対戦ソフトを提供されて研究できると。しかも、コンピュータ側は本番まで内容を変更できないということです。これはかなり人間に歩み寄ったルールではないでしょうか。
(谷川会長)「これは100パーセント、ドワンゴさんの希望です。将棋連盟としては、プログラマーがパソコンをプロ棋士に提供した後も改良できるようにして欲しいと相当抵抗したんですけどね」


とことだそうで、直前までソフトを開発者が修正して、指し手の性質が変わると事前対局の意味をなさないとドワンゴ側が判断して、そう取り決めたようです。この点、誤解されている方が多いと思うので、書いておきます。詳しくは上記ムックをご覧ください。


次に、貸し出しの経緯については同ムックにて川上会長と森内さんのインタビュー記事のなかにこうあります。


(川上会長)事前提供をありにしたのは、一つは第2回の時にソフトの貸し出しについて議論があって、貸し出しされたソフトと当日に出てくるソフトが違っては貸し出しの意味がないのではないかという意見が出ていた。それでまずは貸し出しありの状態でやってみるとどうなるか、検証しようと思ったんですよ。


話は続くのですが、これも詳しく知りたい方は同ムックをご覧ください。いずれにせよ、日本将棋連盟側が、「もうプロ棋士でもコンピューター将棋に勝てなくなってきているから、事前貸し出し&貸し出し後の改良禁止ね!」みたいな要望を出したということではないようです。


ちなみにこの本ですが、対局前の発売ですから、今回の棋譜とか一切載ってなくて、こんな本、誰が買うのかと思っていたのですが、しかしそれぞれの開発者がそれぞれの将棋ソフトを相当詳しく説明していて、開発者のなかでブログで情報を公開している人は数少ないですから、どれもこれも貴重な情報となっています。激指の鶴岡さん、東大将棋の棚瀬さん、船江さん、佐藤慎一さんの四人での座談会もありますし、将棋ファンのみならず、(プログラムは出来なくとも)コンピューター将棋の仕組みに興味のある人が読むとすごく楽しめると思います。


あと、事前貸し出しありだと練習時に勝った棋譜を本番で再現するだけの「なぞり将棋」になるんじゃないか、だとしたら興ざめだ、というような意見もありますが、私は今回はそうなる可能性は皆無だと思っています。


理由1) 本番の対局時間が5時間もあるので、練習すると言っても本番と同じ持ち時間で何局もやるわけにはいかない。
理由2) 定跡選択にランダム性があるので、プロ棋士が後手番である場合、先手が76歩、86歩、58飛、78飛、etc…と、違う手で来られるともうそれだけで定跡を外して指定局面に誘導というようなことはできない。
理由3) それぞれのソフトが何らかの貸し出し対策をしている。(やねうら王は局後学習、Ponanzaは評価関数に乱数を加える、YSSは指し手のオーダリングや駒割に乱数を加える、etc…)


実際、今日、佐藤紳哉六段にそのへんを聞いてみても、「貸しだしてもらったソフトに関して持ち時間は1時間とか2時間とかでやってます」とのことで、また、特定の定跡についてソフトがハマる指しかたを研究しているわけではなく、毎回違う形を試しているとのことでした。「それで一体何の参考になるんですか?」とお尋ねしたところ、「ソフトの間合いの取り方や、寄せの速度なんかを参考にしてます」とのことでした。


「ゲーム攻略のようにソフトの欠陥を探すようなことはしたくない」(どうせ、そういうのは今回の電王戦が終わってしまえばそれ以降通じない方法なので)と言われたので、「棋士とはそのように盤上の真理を追求するのが使命なんですね!先生、いますごく輝いてますよ!頭だけでなくね!」と褒めておきました。


また、「(上記の)ムックではPonanzaが好きだとのことですが、やねうら王はどうですか?」と質問したところ、「Ponanzaは終盤の寄せが鋭いところが好きですね。やねうら王は、ひねり飛車とか戦型によっては思いもよらない手が飛んでくることがあります。棋風としてはもっさり型かな。じわっと押し上げてくる感じ。」ということでした。人間に読みにくい性質の指し手というのはあるようです。


今回、なかなか興味深いお話がたくさん聞け、今後のコンピューター将棋ソフトの開発の方向性が見えました。佐藤紳哉六段と関係者の皆様にはこの場をお借りして感謝致します。本当にありがとうございました。