ぼったくり店に入った話


私が大学生のとき、当時付き合っていた彼女とよく神戸でデートした。
そのときたまたま入った店は、いま考えてみるに、いわゆるぼったくり店だった。


一番安いのはポテトチップで、それが2,000円もした。
その他、メニューに書かれているランチの金額は5,648円と8,930円との二種類しかなかった。


5,648円もするエビチリがどれだけうまいのかと思い、エビチリを頼んだのだが、エビチリとは名ばかりで1センチ未満の小さな小さなエビが混じった炒飯のようなものが出てきた。チリソースも若干かかっていたかも知れないが、これをエビチリと言うのはいくらなんでもひどい。文句の一つも言ってやろうと思ったのだが、値段が、5648(殺し屋?)と8930(ヤクザ?)の二つしかないので、「まさか…」と思って怖くなってそのままお金を払って店を出た。


おかげで私は家まで帰る電車賃が無くなり、「神戸なんかなくなってしもたらええねん」とかぶつぶつ言いながら12時間かけて(当時住んでいた)姫路まで夜通し歩いて帰った。偶然にも阪神大震災があったのは、その連休開けの火曜日だった。


阪神大震災は、まさか私が念じたから起きたものではないだろうし、私だってそのぼったくり店は潰れて欲しいとは思ったが、「神戸がなくなってしまったらいい」なんて本気では思っちゃいなかったというのに…。