大人のためのピアノ入門(2)


昨日の続き。


■ 練習の方針


最初に仮定したように我々は特定の曲が弾けるようになりたいわけではない。初見弾きの能力をただひたすら高めたいのである。そのため偏ったテクニックのみを訓練するようなことは避けるべきである。また特定の曲に固執するのも良くないだろう。


幅広く通用する技術を習得する訓練を繰り返し、初見弾きの能力を高めていくことで結果的にバイエルとブルグミュラーが弾けていた、という状態に持っていくのが望ましい。また、そのときに弾けない曲が何曲か混じっていても構わない。


そのため自分が苦手な難しいパッセージを繰り返し練習するようなことは(その曲は弾けるようになるだろうが)無意味なことであり、避けるべきである。バイエルやブルグミュラーが完璧に弾けることが目標ではないからである。


■ 演奏解釈


本来は曲というのは、最初に演奏解釈があって、それに従って演奏されるべきだが、しばらくは演奏解釈なんて出来なくて良いだろう。なぜなら、特定の曲が完璧に弾けることにはここでは重きを置かないからである。


しかし中・上級者ならばフレージングの解釈やメトリークぐらいは正確に理解しているべきである。お勧めは、


・ヘルマン・ケラー著 フレージングとアーティキュレーション―生きた演奏のための基礎文法
・大村 哲弥著 演奏法の基礎―レッスンに役立つ楽譜の読み方」(この本はかなり難しい)


である。欲を言えば、保科先生の生きた音楽表現へのアプローチ―エネルギー思考に基づく演奏解釈法も読んでおきたいが、この本は絶版になっていて入手困難なのでお勧めはしない。


■ 段階的な習得


練習は段階的に行うべきである。6度(ドとその右にある一番近いラまで)の距離感がつかめていないのに7度やオクターブ(8度)を練習するのは順番が違う。


もちろん、順番通りではなくもっと柔軟にやっていっても良いのだが、なるべく段階的に、そして易しいところから順番に確実にこなしていくのが上達の近道である。



(つづく)