エロゲー製作は大変ナリよ(4)

エロゲーの市場は何故そこまで悪化したのか?


そもそもエロゲー製作の採算性がそこまで悪化したのは、(不正確であることを承知で簡単に説明すれば)Windows95の登場でパソコンユーザーが急激に増加し、エロゲーのマーケットが急速に拡大する一方、それより速いペースで新規参入してくる企業やブランドが増加し続けた(1997年〜1999年)からだと思う。


もはや飽和状態にあり、大手か本当に小規模でやっているところしか生き残れない状況になっていても、大資本によって新規参入してくる企業は依然としてゼロにはならず、そういうメーカーの参入によって弱小メーカーは押しのけられるようにして業界からフェードアウトせざるを得ない。(本当は、経営的な視座で見ると飽和市場において一番の煽りを食らうのは中堅の会社なのだが、ここで中堅の会社も「弱小メーカー」とひと括りで論じることをお許しいただきたい。)


しかも小資本で新規参入しようというメーカーの経営者は脱サラ組などであり、資金に余力がない。普通は、製作効率の観点からこの手のゲーム製作は必ずいくつかのラインを分けて製作を進めていくべきなのだが、それが出来ない。そうなると、企画マンそしてプログラマサウンドの人を雇い入れても彼らに絶えず仕事を与えることが出来ない。よって、企画マン、プログラマサウンドはだいたいの場合において外注になるか、企画とシナリオ兼任だとか、プログラムと雑務兼任だとかそういう体制になる。


また、企画〜製作〜完成〜発売〜入金までのサイクルは半年〜1年のスパンになるが、たかだか1,000本程度しか売り上げが見込めない状況では、まともに雇用すら出来ない。要するにプログラマにせよ、グラフィッカにせよ、本業を他に抱えたまま、“試しに”エロゲーを作ってみる、というような状況になりがちで、本腰を入れて製作するわけではないので製作ペースが非常に遅い。


経営者側から言えば、投資からリターンまでのサイクルが非常に長い。途中でマーケットの動向が変化したとわかっても、引き返すことが出来ない。最終的な採算がプラマイゼロないし多少のマイナスであったとしてもプロジェクトを中断して投資したぶんすべてが水泡に帰すよりは遥かに良いので立ち戻らない。その結果、飽和状態にある市場めがけて突進するしか道は残されていないのである。これは、まるでブレーキの壊れた車で行なうチキンレースかのようだ。こういうオーバーシュートが市場を急速に麻痺させる。


経済システムの残忍性は、このように市場へ経営者の意志が反映するまでに絶えず遅延を生ずるところにあると思う。


(つづく)