銀行振込だと領収証を発行しない?

なんかときどき銀行振込なのに領収証を発行してくれという会社さんがいて困る。収入印紙もタダじゃないんだぞ!と私は思う。


ちょっと私の理解を以下につらつらと書いておくので間違ったことを書いていたらコメント欄で教えていただきたい。



■ 領収証の発行を請求する権利


民法 第486条に次のように書かれている。


「弁済をした者は、弁済を受領した者に対して受取証書の交付を請求することができる。」


つまり、領収書の発行を請求する権利はある。請求されたほうは、これに応じなければならないとは書かれていないし、応じなかったときの処罰に関しても書かれていない。


とまあ、とんでもなく穴のある書き方になっているように思えるのだが、日本の商慣習上は「領収証の発行を請求されたらそれに応じるべき」と考えられている。


ゆえに、以下では領収書の発行の請求に素直に応じるものとして話を進める。



収入印紙の額


領収証には収入印紙を貼らなければならない。記載された受取金額に応じて次のように定められている。


3万円未満→非課税
100万円以下→200円
100万円超200万円以下→400円
200万円超300万円以下→600円
300万円超500万円以下→1千円
(以下略。詳しく知りたければググれ)



■ 領収証に貼る収入印紙は誰が負担するべきなのか


領収証に貼る収入印紙は誰が負担するべきなのか。


これは、印紙税法 第3条の2に次のように定められている。


「(納税義務者) (中略)…その作成した課税文書につき、連帯して印紙税を納める義務がある。」


このことから文書の作成者(領収証の発行者)が負担しなければならないことがわかる。



■ 銀行振込時の印紙税


銀行振込をする場合、振込み金額が3万円以上になると振込み手数料が少し上がる。


ATMから打ち出される振込み明細には「印紙税申告納付につき××税務署承認済」と書かれている。このことから、振込み手数料に印紙税が含まれていることがわかる。



■ 誰が印紙税を支払うべきか


誰が印紙税を負担しているのかよく考えてみよう。


1) 銀行振込→振込みする側が印紙税を負担する
2) 領収証→お金を受け取った側が印紙税を負担する(収入印紙を貼る)


1)と2)では印紙税を負担している側が違う。
1)の場合、常識的には振込みする側が振込手数料を負担する。



■ 銀行振込されたお金に対して領収証を発行するのは何故おかしいのか


銀行振込には振込み手数料に印紙税が含まれていると考えられる。銀行振込のときに領収証を発行して収入印紙を貼った場合、印紙税が二重に課税されていることになる。


だからと言って「銀行振込だから振込み時に印紙税を負担しているはずなので、領収証に収入印紙を貼らなくてよい」という取り決めはない。領収証を発行する以上は(記載された受取金額が3万円を超えるならば)収入印紙は貼らなければならない。


常識的には同じ種類の税金が二重に課税されることはないはずなので、これはおかしいように思えるし、日本の商慣習上も、銀行振込されたお金に対する領収証は発行しないのが普通である。



■ 本当に印紙税は二重に課税されることはないのか?


AさんがBさんに3万円で何かを売るとする。このときAさんがBさんに領収証を発行し、収入印紙を貼る。


さらにそれをBさんがCさんに3万円で売るとする。このときBさんがCさんに領収証を発行し、収入印紙を貼る。


以下、何度もそれを他の誰かに売るごとに、領収証には収入印紙が貼られることになる。


これは印紙税が二重に課税されていることにならないのだろうか?


上記の例は非現実的な例だと思われるかも知れないが、上記の例と同じ構造で、次のようなケースが起こり、現実的によく問題となる。


例) 建設工事で重層的な下請関係があるとき、一つの工事に対して、工事請負契約書が下請けの数だけ存在していて、工事請負契約書の数だけ収入印紙を貼っている。


この場合などは明らかに多重に印紙税が課税されている。


つまり、このことから、印紙税が多重に課税されてはならないという原則など存在しないのではないように思える。上記のような例は「多重に課税されているとは解釈しない」と主張する人もいるようなのだが…。


ともかく、印紙税法自体が二重納付が発生しうるおかしな税制なのだと私は思う。



■ まとめ


日本の商慣習上、銀行振込のときは領収証は発行しない。その理由は「印紙税が二重納付になるから」というのが模範解答なのだと思う。


しかし印紙税の二重納付になるとまずいというその法的な根拠がどこにあるのかは私にはよくわからない。誰かコメント欄で教えてくだされ!


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