救急車の乗り方 for ビギナーズ(1)


家族が大けがをしたとする。あなたは救急車を呼ぶだろう。ビギナーにとっては救急車さえ来ればひと安心だと思うかも知れない。実際は、全然そんなことはない。今日は救急車体験豊富(?)な私が、救急車の呼び方、救急車の乗り方について5回に分けて書いてみる。


■ まず119に電話をする


119に電話を入れる。「こちら119です。消防ですか?救急ですか?」と聞かれる。


慣れてないと極度の緊張と不安から「小房ですか?九級ですか?」に聞こえて何のことだか戸惑うかも知れないが(そんな奴は居ないか..)、背筋を伸ばして「救急です」と言い、患者の様態について話そう。このとき、慣れていないと長話をしてしまいがちであるが、電話の受け付けの人は、何人手配すれば良いかだとかどんな救命装置が必要かなどを簡単に判断するだけである。余計なことを言うと時間の無駄である。


しかし、ここであなたが説明に失敗すると「タクシーでも呼んで、自分で病院に行ってください」となる。市民の血税を無駄には使えないのである。あなたは、どうしても救急車でなくてはならない理由を論理的かつ簡潔に述べよう。またこのとき携帯の電話番号も伝えよう。


模範例) 「父が階段から滑り落ち、足を骨折したようです。足以外に怪我はないようですが、私では父を運べないので、救急車をお願いします。住所はXXXです。携帯はXXXです。」


何故、住所のほかに携帯の電話番号を伝える必要があるかと言うと救急車が道に迷うからである。


そうすると「近くに救急車が来たら家の前に出て誘導してください」と言われる。
場所にもよるが、大都市ならば通例、5分〜10分程度で救急車はやってくる。


ちなみに、救急車が出動してから現場に到着するまでの平均時間は、東京都の場合、6分10秒(平成18年)。
しかし東京都の場合、そのあと搬送先の病院に到着するまでの時間は40分以上と全国ワースト1。
ここからもわかるように、救急車は来るまでが大変なのではなく、来てからが大変なのだ。


■ 救急車が来るまでにするべき3つのこと


患者の様態に絶えず気を配り、応急手当をすることはもちろんのことだが(応急手当については私は専門ではないのでここでは何も語らない)、その以外にもしておいたほうが良いことが3つある。


ひとつは、健康保険証の用意である。健康保険証は後日病院に持っていけば、(本人負担が3割だとすれば支払すぎたぶんの7割のお金を)還付してくれるが、健康保険証そのものを持っていないような人(10割負担)だと治療費が高額になるし、健康保険証そのものを持っていない人がそんな高額の治療費を払えるとは思えない。そのため、健康保険証を持っていない/用意しておかないと受け入れ先の病院が見つからないことがある。


ふたつ目は、財布の用意である。小さな病院ではクレジットカードが使えないので、現金が必要である。治療費の支払いは後日持参ということでも良いが、その場合、患者の健康保険証を病院に預けるか、さもなくば一時預かり金として5万円程度病院に払って(預けて)くれと言われる。(病院側は貧乏患者の脱走に神経を尖らしている。)


また、行きは救急車で費用はかからないが、遠くの病院の場合、帰りは電車なりタクシーなりで帰ってこなければならない。そのためのお金が必要なのである。財布を忘れると本当に後悔する。


みっつ目は、患者の住所・氏名・年齢・電話番号を紙に書いておくことである。これが何故必要になるかと言うと、患者が快復したときに病院からお金を払わずに逃げ出すのを防止する意味で、普通は救急車のなかで付添い人が所定の用紙に書かされる。しかし用紙に指定があるわけではないので、事前に用意しておけばそのぶんスムーズに行く。このときの紙は、チラシの裏でも何でも良い。


もし持病があって掛かり付けている病院があるなら、診察券や過去の検査結果などもあると良い。掛かり付け病院への問い合わせの時にスムーズに行くかも知れない。


(明日のエントリにつづく)