我は知を探求する者なり!(13)

常に電波の届かない場所に置かれた携帯には原則的にFOMAスパムメールが送られることはない。


本当にそうか?


連番のFOMAを2台用意して片方は常に電源を切っておいた。1ヶ月ほどしてわかったことは、そちらのFOMAにも稀にスパムメールが1/4程度は届くということだった。つまり、そこで届いたスパムメールを送信している業者はFOMAの番号の洗い出しを行なわずに番号に対してしらみ潰しに送信しているということだ。


そんなことをすると送信効率が劇的に悪くならないか?FOMAの加入数は300万人(注意:私がこの調査を行なっていた2004年5月当時)程度しか居ない。それならば090/080で始まる番号の組み合わせの2億通りに対して300万だから1.5%しかヒットしないことになる。


実際はそうではない。FOMAの新規加入番号帯は簡単にわかる。たとえば、それはラジオライフ誌にときどき掲載されている。番号(090/080のあとの3桁ないし4桁)に対して、それがどのキャリアのどの地方が使用しているものなのかが記載されている。その表を時系列順に見れば、どこが新規加入番号帯なのかわかるのである。新規加入番号帯における番号に対するFOMAの存在比率は60%を超える。その場合、しらみ潰しに送信してもそれほど率は悪くない。


その場合、本当に番号の洗い出し(FOMAの番号のみを抽出する)を行なうよりしらみ潰しにスパムメールを配信したほうが送信効率が良いのか?


1つの番号に対して(FOMAFOMA以外かの)判別を行なうのに必要な時間は、ATコマンド送信時間+発信時間+NO CARRIERが返ってくるまでの時間 + マージンタイム(余裕時間)+切断(初期化)時間である。ATコマンド送信時間はほぼ0と考えられるし、発信時間は発信音が2,3回鳴る時間なので通例2秒以内。そこからNO CARRIERが返ってくるのが1.5秒程度。マージンタイムを1秒とったとしても4.5秒。切断してリセットするのに0.5秒かかったとしても5秒で1件の洗い出しが完了することになる。それからすれば1件12〜15秒かかると考えられるスパムメール送信は判別に比べて分が悪い。


その番号帯に対するFOMAの存在比率が80%だとわかっていたとしたらしらみ潰しに送るほうが送信効率が良いのか?


いま、5秒で(FOMA/FOMA以外の)判別、12秒で送信が完了すると仮定しよう。FOMAの存在比率は80%だから、判別を行なわずに100件の(相手に到着する)スパムを送るためには100/0.8 = 125通送信しなければならない。125×12秒 = 1500秒である。判別を行ない、100件の(相手に到着する)スパムを送信する場合、判別に要する時間は100×5秒=500秒。その100件の送信にかかる時間は100×12=1200秒。合計500+1200=1700秒である。すなわち存在比率80%においては、判別を行なわないほうが送信効率が良い。


存在比率が何%以上ならば、判別を行なわないほうが送信効率が良いのか?


上の計算により100件送る場合、判別を行なわない場合1700秒。判別を行なう場合、存在比率をxとすると100/x×12秒。これが1700より増えるのはx>=12/17≒70.58%。すなわち存在比率がこれを上回るとわかっているときは業者は判別を行なわないと思われる。


本当にそうか?FOMAの存在するメールアドレスリストを作ることには価値が無いか?


あるだろう。そのリストを売ったり、あるいは再度、その番号に対して別のスパムメールを送信したりするのに役立つかも知れない。


他に判別を行なうメリットは無いのか?


判別するのに必要なFOMAはUSBケーブル(市価1,000円程度)で接続するだけで良いのに対し、送信するために必要なFOMAは必ず何らかの改造が必要になる。だから、それぞれの1台の製造コストは違うはずで、判別のほうがはるかにローコストだと言える。よって、FOMAの存在比率が70.58%を上回る場合でも、判別を行なってから送信するほうが結果的にローコストになるということは考えられる。


ということは、業者はほぼ間違いなく判別を行なってからスパム送信を行なうという結論にはならないか?
(つづく)