[offtopic][disassembler] みっつ目は自分は呪われたプログラマであるということ(10)
学校も行かずにPC-6001のBIOS解析に明け暮れる日々が続き、ご飯そっちのけでパソコンをするもんだから、次第に私はやせ細って行った。私がメモに使っていたノートには奇妙な数字と文字の羅列、四六時中つぶやいている独り言は「ええとHLとstackに積んであったのがexchangeしてこれ二回popしたらここまでで51clockかかって..」とか万事こういった調子でまったく日本語として意味を成していない。母親は、自分の息子がキチガイになって日本語を忘れてしまったと思ったらしい。ある日、私を連れて精神病院へ行くこととなる。もし、精神鑑定の結果いかんでは、精神病院に入院もやむなしという態度であった。
精神病院では精神鑑定と知能テストがあった。「おかあちゃんも受けるなら受ける」と子供じみた駄々をこねて母親にも同じテストを受けさせた。これには子供心ながら、“こいつになら勝てる”という戦略的な要素が含まれていた。
そして、私の精神鑑定の結果は、偏執癖があるものの、きわめて正常な範囲であった。知能テストでは、全問正解で、(高すぎてこのテストでは)測定不能と判断された。対して、母親の知能テストの結果は、私よりはるかに低く、その意外な結果が母親には相当ショックだったらしく、そのあと寝込んでしまった。まさかキチガイ、キチガイだと侮蔑していた自分の息子が正常で、しかも自分よりはるかに高い知能を有しているとは思わなかったのだろう。
それ以来、母親は私の好きにさせてくれるようになった。「この子は頭のいい子なんだから、自分の人生は自分で切り開いていけばいい」と思うようになったらしい。(つづく)