FM音源の可能性


私自身は、FM音源のパラメータを実際にいじったことは無いので、よく知らないのだけど、次のようなテクがあるらしい。

この音はストリングスなのだけど、OPNのアルゴリズム4で4と3のmultipleを並べることによって、5度の和音になっている。こういう音を作るのはそれほど難しくはないが、常に5度の和音が鳴るのでちょっと使いにくいが、1チャンネルをエコーに回すだけで、つまり2チャンネルだけで、単音なら4音要求されてしまう音を実現できてしまう。彼らはこんな音まで平気で曲に入れ込んで使いこなしてしまう。


ファルコム音楽フリー宣言(ものがたり)
http://d.hatena.ne.jp/atsushieno/20090606/p1

1チャンネルだけでP5(完全5度)のintervalのある2音を鳴らすテクのようだ。


省リソース環境でShort Codingのような技法でプログラムを極限まで縮めてメモリに詰め込むのはよく見かけるが、音源でもそこまでするのか…という感じではある。


しかし、P5が出来るなら、和音としてよく使う代表的なinterval(m3,M3,P4,P5,m6,M6,m7,M7)もひと通り用意しておいて、音色を1音ごとに切り替えれば、1チャンネルで2音分鳴っておいしいような気もする。綺麗な整数比であるP4,P5以外が、FM音源で実現できるのかどうかは知らないが…。


ところで、シンセで不用意にP5上の音やP4下の音が鳴っているということは結構ある。


坂本龍一が『Riot in Lagos』を別の音源でレコーディングしなおそうとしたとき、どうもしっくり来ないので、よく聴き直したら、元の音源では4度下の音が入っていることに気づいたという話を雑誌のインタビューで答えていたと思う。(以下に追記あり)


逆に言えば、『Riot in Lagos』の原曲では、常にP4下の音が同時に鳴っていたわけで、それなら、P5上の音が常に同時に鳴っているような音源があったとしても、それはそれで何かに使えなくはないんだろうなと腑に落ちたり…。


■ 追記


本文中で書いた、坂本龍一のインタビューのソースが見つかったので、以下に引用しておく。




オフィシャル・スコアブック 坂本龍一「/04」 (Official Score Book)(これは、アマゾンで8万円という超プレミア価格になっている。)に書いてあった。


また、山下 邦彦の「坂本龍一の音楽」にも再録されていた。


「よく聴き直したら、4度下の音が入っていて…」


《(この曲のメロディーは全部、4度下の音がいっしょに平行で動いていますね。これは原曲のシンセも、そうなっていたんですか)》


 そう。これ、「4度下」がないと全然違う曲に聴こえるんだよね。この4度がすごく大事だったみたい。なぜか最初気がつかなくて、全然感じが違うから変だなと思って、よく聴き直したら4度下の音が入っていて。たぶんProphet-5上で2番目のオシレーターを自動的に4度下にチューニングして、やってたと思うんですけど。ザヴィヌルもよく4度下で重ねていたでしょ。


(するとシンセの鍵盤上では弾いていないんですね。ピアノでは弾かないといけない。ただ、ピアノで、4度でこのスピードで弾くのは難しいですね。)


 そうですね……弾きながら……。4度で弾くのはちょっと難しいです。


(でも、ここを4度で弾かないと。)


 そうそう、あの良さが出ないんですよ。


(4度で弾くことによって、浮遊感が生まれるんですね。「ドミソ」というコードを、下に4度(音程)が来るように転回すると、「ソドミ」という、いわゆる四六の和音になりますが、この転回形のもっている浮遊感ともつながるんでしょうか。)


 ちなみに、西洋音楽の歴史上初めて、その「ソドミ」という四六の和音の浮遊感を、そのトニックの機能から外して使ったのは、ドビッシューですよ。初めてですよ。それは革命的なことだったんです。


(その後の掛け合いの部分もまた絶妙ですね。移動ドで歌うと、「♪ミソラーソーミミソラ」と「♪ミラードーファミ」が2泊半ずれて絡むところです。最初のメロディーには、やはり「4度下」が鳴っていて、あとのメロディーには全体的に3度下の音が鳴っています。表面的には、関係性が弱い感じで、はかなくて、でもすごく強く結び合っているようなコール&レスポンスがカッコいいなあと思って。)