第2回 将棋電王戦 第1局 リアルタイム実況


■ 11:00


本日開催されているコンピューター将棋とプロ棋士との対局である
第2回 将棋電王戦 第1局 阿部光瑠四段 vs 習甦
のリアルタイム実況をしていきます。


第2回将棋電王戦 第1局阿部光瑠四段vs習甦 PV
D



■ 11:10



先手(阿部光瑠四段)が先手の一手損角換りっぽい出だし。
先手の一手損角換りは習甦の定跡形にないためか、そこでノータイム指しがストップ。


先手が端歩を突いたときに、後手(習甦) は端歩を受けなかったのですが、これはどうなんでしょう…。
先手はそれを咎めるべく、端歩を突き越しました。


ここまでの指し手。(初手より)


▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8四歩 ▲7八金 △8五歩
▲2二角成 △同 銀 ▲8八銀 △7二銀 ▲3八銀 △3二金
▲7七銀 △6四歩 ▲9六歩 △6三銀 ▲9五歩 △4二玉
▲4六歩 △7四歩 ▲6八玉 △7三桂 ▲4七銀 △3三銀


■ 11:20


大将棋の作者の棚瀬さんのツイート。
https://twitter.com/tanaseY/status/315276078996410369



コンピューター将棋は玉の安全度に対して高い点数がつきやすく、端歩のように将来的に(30〜50手後ぐらいに)生きてくるような部分は軽視してしまう傾向があるようです。コンピューター将棋の弱点と言ったところでしょうか。


つまり、現在の局面はコンピューター将棋の弱点をうまく突いた阿部四段が一本取った形ではないかと思います。
このリードを阿部四段が維持できるのか、習甦が力でねじ伏せるのかという勝負になりそうですね。


■ 13:30


12:00〜13:00の昼食休憩が終わり、後手がいきなり仕掛けました。6五桂。それに対して6八銀と引いて攻めを切らしに行く方針の先手。



今回の放送では、ボンクラーズ(第一回 電王戦 優勝ソフト)を使った評価値が画面上部に表示されており、それによると後手(習甦)側が+174とのことなので、ボンクラーズは後手がやや有利と見ているようです。


■ 13:40


今回の電王戦がすでにNHKのニュースとなっているようです。
それだけ話題性があるということでしょうか。



コンピューターと対戦「電王戦」始まる
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130323/k10013403621000.html


■ 14:00


そういや、週刊アスキーPLUSの記事で、今回電王戦で対戦する五人のプロ棋士のかた向けに、東京農工大学の小谷善行教授が『コンピューター将棋の思考と弱点』という勉強会をされたそうです。


そのなかでノートPCでツツカナ(今回の電王戦の第3局で用いるソフト)を動かし、プロ棋士の五人が対戦した結果が以下の通り。



人類とコンピューターとの戦いがいよいよ明日から・第2回電王戦開幕
http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/134/134639/


一般論として長い持ち時間になれば人間側が有利になると言われていますが(短い時間特有のポカは減るでしょうが)、本当のところどうなんでしょうかね。


■ 14:30


夢枕獏先生が登場。


風果つる街 (角川文庫)


今回、声がかかったのは、以前書いた将棋の小説によるご縁だそうです。


左の小説ですかね…。




(初手より)
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8四歩 ▲7八金 △8五歩 ▲2二角成 △同 銀
▲8八銀 △7二銀 ▲3八銀 △3二金 ▲7七銀 △6四歩 ▲9六歩 △6三銀
▲9五歩 △4二玉 ▲4六歩 △7四歩 ▲6八玉 △7三桂 ▲4七銀 △3三銀
▲5八金 △3一玉 ▲5六銀 △5四銀 ▲7九玉 △2二玉 ▲3六歩 △5二金
▲3七桂 △6五桂 ▲6八銀 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲8七歩 △7六飛
▲6六歩 △同 飛 ▲6七銀上 △4四角 ▲8八角 △5六飛 ▲同 歩 △8八角
▲同 玉 △4四角 ▲9八玉



■ 14:40


局面のほうは、先手が受けきれるかどうかという際どいところ。ボンクラーズによる評価値は後手 +353。ボンクラーズは後手有利と見ているようです。


個人的には、角換りからの6五桂からの仕掛けは相当有力だと思います。Bonanzaでもこの手の仕掛けをよくやってきますが、私は受けきれる気がしません。


正確な受けを続ければ形勢互角を維持できるのかも知れませんが、プロでも結構キツイのではないでしょうか。


■ 14:50


ここで塚田九段(今回の電王戦の第四局の対局者)へのインタビュー。



1筋の端歩が突き合ってあれば互角ぐらいで、この局面は1筋を先手が突き越しているので先手のほうがやれるのではないかとのこと。


もしそれが本当だとしたら、ボンクラーズの評価値では依然として後手有利を示しているので、コンピューター将棋では評価が苦手な局面と言えるのかも。


■ 15:20


後手の攻めが細くてこのあとどうするんだろうと思っていたら後手4ニ金右。ここで自陣を固めるのは攻めがないということですかね…。



ボンクラーズはここで後手+210。まだ少し後手持ちとは言え、少し後手の評価値が減りました。ここまでの手順で何か後手に悪手があったのかも知れません。


それでも先手はここから勝ち切るのはまだまだ大変なので熱戦が続きそうです。


■ 16:30


上図は先手番。ボンクラーズの評価値はすでに先手+416。いよいよ人間側優勢と見ているようです。


ここで先手は6ニ角成(7三角成より、5三の地点に利いているので働いている意味がある)として後手が4ニ金上、5一馬と進行。先手はこの一連の手順により先手は5一に馬を一手で打ったのと同じ局面に。


阿久津七段の解説によると「ここで先手勝勢になりました」


■ 17:30


先手が3四歩と取り込んだ手に対して後手が同銀とした局面。ボンクラーズの評価は先手+1245。先手勝勢。



後手は序盤で先手に端歩を突き越されたのが祟っているようです。



■ 18:30


後手(習甦)が投了しました。


上画像の右側は阿部四段。左側は習甦側の代理の奨励会員。


(初手より)
▲7六歩△3四歩▲2六歩△8四歩▲7八金△8五歩▲2二角成△同 銀
▲8八銀△7二銀▲3八銀△3二金▲7七銀△6四歩▲9六歩△6三銀▲9五歩
△4二玉▲4六歩△7四歩▲6八玉△7三桂▲4七銀△3三銀▲5八金△3一玉
▲5六銀△5四銀▲7九玉△2二玉▲3六歩△5二金▲3七桂△6五桂▲6八銀
△8六歩▲同 歩△同 飛▲8七歩△7六飛▲6六歩△同 飛▲6七銀上
△4四角▲8八角△5六飛▲同 歩△8八角成▲同 玉△4四角▲9八玉
△6九銀▲6八金右△7八銀不成▲同 金△5七桂成▲7六銀△7五歩▲8五銀
△6七金▲8八金△4二金右▲7一飛△5六成桂▲9一飛成△8四歩▲同 銀
△7六歩▲7八歩△6六角▲5一角△4一金▲6二角成△4二金上▲5一馬
△3九角成▲1八飛△6六馬▲8二龍△8六歩▲3五歩△8七歩成▲同 金
△1二玉▲3四歩△同 銀▲4二馬△同 金▲同 龍△2二角▲3一銀△3二歩
▲3三歩△同 馬▲同 龍△同 桂▲4二角△2一飛▲2二銀成△同 飛
▲3一角打△2一銀▲3六香△8六歩▲同 金△8五歩▲同 金△7七歩成
▲同 歩△8六歩▲3四香△8七歩成▲同 玉


■ 18:50


阿久津七段による一局全体の解説。


途中、下図の局面の「7八銀不成(成りなら8八角成の詰めろなのだから人間なら成るのが普通)はどういうことなのでしょうか。」とのことでした…が、



銀は成りと不成とでは成りのほうが働きが高いとは限らないので、不成の指し手を先に生成している開発者が多いのだと思います。


指し手はオーダリングと言って、優先順位をつけて有望そうな指し手から順番にその先の局面を調べていくのですが、オーダリングで2つの指し手に同じ点数がつくと、生成した指し手の順になることがあります。(真面目にソートすると計算時間がもったいないので、一番大きな点数をつけた指し手を最初に調べて、そのあとは一切並べ替えずに生成した順で先の局面を調べるような処理にすることがあります)


このようにして、ある状況において、指し手を生成した順でその先の変化を調べていくことになるのですが、不成を先に読んでその末端の局面での評価値が求まり、そのあと銀成りのほうも読んでも同じ局面に合流して、結局、先に調べたほうの評価値を上回らないため、先に調べた指し手を指すという仕組みになっています。(いわゆるαβ探索)


Bonanzaソースコードはこんな感じの処理になっています。


ゆえに、この銀不成はコンピューター将棋的にはそんなに珍しい指し手ではないかなと思います。


■ 19:20


記者会見にて。


今回の対局した阿部四段によると9八玉までは自宅で研究していた(自宅での実戦と同じ)手順に近い(研究手順では2ニ玉ではなく3一玉の形)とのこと。


また、4時間の持ち時間で20局ほど自宅で指したとのこと。




■ 19:30


今回の電王戦は五番勝負で、このあとコンピューター将棋側はさらなる強豪ソフトが控えているので楽しみですね。

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::::::::        |  習甦がやられたようだな….      │ 
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:::::   |フフフ…奴は四天王の中でも最弱 ….     │ 
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|  C2棋士に負けるとは       │ 
|  我ら四天王の面汚しよ…    │ 
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  |ミ,  /  `ヽ /!    ,.──、 
  |彡/二Oニニ|ノ    /三三三!,       |! 
  `,' \、、_,|/-ャ    ト `=j r=レ     /ミ !彡      ● 
T 爪| / / ̄|/´__,ャ  |`三三‐/     |`=、|,='|    _(_ 
/人 ヽ ミ='/|`:::::::/イ__ ト`ー く__,-,  、 _!_ /   ( ゚ω゚ ) 
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