知能と忍耐


知能指数150以上を天才と呼ぶなら2330人に1人が天才だ。*1 そうした場合、日本には5万人以上もの天才がいらっしゃる。


インターネットでも右を向いても天才、左を向いても天才。2chも天才で溢れ返っており、Yahoo知恵袋も天才の巣窟、はてブのホットエントリーにも天才の書いた記事が並んでいるという始末である。まさに天才の大安売り、天才博覧会のようになっているのは無理もない。


先日、そのなかの、とある天才が大手企業を退職した記事を読んでいると私にはすごく違和感があった。


というのも、その人は間違いなく天才で文章も一貫しており非常に長文を理路整然と書かれている。なのに、本当、つまらないことがその人には我慢ならなかったらしく、その会社をやめたというのだ。


その人の文章が最初から最後まで支離滅裂なら、私もこんな感情は抱かなかったと思う。その人の文章は論理性に非常に優れ、それ自体が芸術作品とも言えるほどの仕上がりなのに、退社した理由が私から見てとても陳腐で幼稚なものだった。喩えて言うなら、コンピューターグラフィックスを駆使した壮大なスペクタクル映画のオチが夢オチで、映画の最後で実写のハゲたおっさんが出てきて「ハッ、夢か…」と言ったぐらいの内容。観客、総ツッコミ&ブーイングの嵐。そんな感じだった。


ただ、その記事を書いたご本人は真剣に悩んでいて、生きるか死ぬかぐらいの決断をしていることはわかるのだが…。


その人はそこまで頭がいいのだから、もう少しポジティブに物事を捉えたり、あるいは報酬のためだと割り切るなり、何かそういう融通は利かせられないものなのかと思った。ぶっちゃけて言えば、幼稚園児ですらそれくらいのことは我慢すると思うのだが。


こうして考えてみると知能の高さと忍耐力とはもしかして反比例するんじゃないだろうか。


忍耐力がなくとも好きなことをやっているうちは知能の高さと相まって高度な仕事が出来るわけだが、ひとたび何か気に食わないことが生じ始めると途端にへそを曲げてしまう。一歩も前に進みたくなくなってしまう。


ある意味病気だと思うのだが、そういうタイプの天才が世の中にたくさんいるというのもまた事実であって、企業側としては、そういうタイプの天才とうまくやっていく自信がないなら採用面接の段階で弾いたほうが、企業側も採用される側も幸せになれる。「あなたはうちの会社には合いませんよ」というのを早い段階で察知して、教えてやるのが親切というものだ。

*1:Wechsler法でIQを計測するものとする。