六目並べを考えた奴は天才


iPhone/iPad用のアプリで六目並べというゲームがある。


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「六目並べ」は交通大学工学部の呉毅成教授が発表したゲームだ。(「六目並べ」は「コネクト6」とも呼ばれる。正確な起源は不明。)
五目並べ」はみんな知ってると思うが、これは、五目ではなく六目並べるのだ。


私はこのゲームの名前を聞いた瞬間、「うわ、やられた!これはまさに天才の所業だ」と思った。


五目並べに詳しくない人のために、なぜこれが天才の所業なのかを以下にだらだら書いてみる。



まず、五目並べというのは五目並べれば勝ちだ。しかし、「五目並べれば勝ち」というルールだけだと、素人同士ならいざ知らず、中級者以上がやるならば黒(先手)が必勝だ。五目並べで先手番を持って必勝じゃなければそんな奴は初心者だ。


とまあ、五目並べは中級者以上なら先手必勝であるゲームだ。


そこで、公平にする方法がいろいろ考えられた。まず、黒だけ、長連(一直線上に6目以上並ぶ)と三三・四四を禁止というルールを加えた。学生が学校の休み時間などにやる五目並べはこのルールでやることが多い。


しかしそれでもなお黒がまだ必勝だった。必勝定石というものが存在した。まあ、上級者でなければこの必勝定石を知らないから、特に問題にはならないとも言えるが、上級者同士の試合では大問題だ。


だから開始陣形を制限した。開始から3手を固定して、26の初期陣形のいずれかからスタートするようにした。これを連珠と呼んだ。


しかしほどなくして、連珠ですら先手の必勝定石が発見された。ただし連珠の必勝定石は非常に難解で変化に富み、実戦で実際に勝ち切るのは達人レベルでも難しい。



まあ、それはそれとして、なぜこのように先手が有利になってしまうのかというのを考えてみる。


まず、五目並べの勝ちパターンというのは、初心者同士なら直線上に3つ並べて、相手がそれを止めるのをうっかりして、直線上に4つ並んで(いわゆる棒四)、「ああ、とめられねぇ」と負けるかも知れない。


しかし、その域を抜けると、勝ちには次のように2つ同時に三か四を作るパターンしかないことがわかる。*1 (後手番の長連を許すなら、以下の文の“四”は「次に手番で長連になるもの(飛び五、飛び六、etc…)」であってもいい。)


・三三 → 三を違う角度で同時に2つ作ること。
・四三 → 三と四を違う角度で同時に作ること。相手は三と四を同時に止めることができないので、四三を作った方が勝ちとなる。ただし、四の方を止めたことによって自分が四になった場合は、止めることができる場合がある。
・四四 → 四を違う角度で2つ同時に作ること。相手は2つの四を同時に止めることができないので、四四を作った方が勝ちとなる。一直線上にできることもある。


さて、ここで一番の問題は、三三が簡単に出来てしまうということだ。この簡単に出来てしまうものによって勝ちが確定するのがこのゲームの良くないところなわけだ。三三の次に、四三も出来やすい。これで勝ちが確定するのも先手必勝たるゆえんでもある。



そこで三三や四三を作っても勝ちでないようにするにはどうすればいいか。それが実現すれば五目並べは公平なゲームになる可能性がある。連珠のようにルールで三三を禁止してしまうのではなく、三三自体が勝ちにならないようにはできないのか?


連珠をやる誰もが、一度はそのことについて真剣に考えたことがあると思うが、いままで誰も改良案を出せなかった。私もそのうちの一人だ。



しかし「六目並べ」という名前を聞いて、私はその名前を聞いた瞬間、「ああそんな素晴らしい打開策があったんだ!」と全身に衝撃が走ったわけだ。



もうここまで書けば勘の良い読者ならわかってもらえているとは思うが、「六目並べ」というのは、最初先手が1手打ったあとは、後手と先手が2手ずつ打ちそれを繰り返す。


別の言い方をすれば、黒番は最初1個置いたあと、白番が白石を2個好きな場所に置いて、そして黒番が黒石を2個好きな場所に置く。以下、2個ずつ置くのを繰り返す。そして先に直線状に六個並んだほうが勝ちなのだ。


石を2個ずつ置けるから四を作っても、相手は次の手番でその両端に石を置いて止めることができる。つまり、四は勝ちではない。


三三、四三も同様に勝ちじゃない。


四四のみが勝ちだ。四四の片方の四の両端を止めても、もう一方の四がとまらない。


素晴らしい!!


六目並べにすることによって、五目並べにあった不公平を産み出す元凶である三三と四三を禁則にせずして済むのである。三三と四三ではもはや勝ちではないのだから。


こうして見ると、六目並べの、「2手ずつ交互に」というルールが本当にすごい発明だと思う。「2手ずつ交互に」というルールがあって初めて六目並べがゲームとして成立するのだ。このルールがなければ、いつまでたっても六目も揃わないくだらないゲームになってしまう。


ちなみに三三三は勝ち。三三三のひとつの三の両端をとめると次に四四を作られる。三三三のふたつの三の片側のみをとめると、次に片方のとまった四と両端がとまっていない四を作られる。


同様に三三三より価値の高い三三四、三四四、四四四なども勝ち。



「六目並べ」が本当に公平なゲームかどうかはいまのところわかっていない。それでも連珠と比較するとかなり公平なゲームであるとは言えそうで、連珠はいずれ六目並べに取って代わられるのではないかと私は思う。