PCのフリーウェアは死んだ。いや死んでいた。


我が家にiPad(iPad2)が来てからと言うもの、いままでPCでやっていたことの大半はiPadでやるようになり、私はPCをほとんど起動すらしなくなった。


特に自炊した本をコミックビュアーで読むときの快適さは、PCとは比べ物にならない。


例えば文字が潰れて読みにくいとしても、iPadならば指でピンチアウトするだけで拡大できる。これがPC用のコミックビュアーだと、メニューをクリックして、ルーペを選択して、マウスでそのルーペを拡大したい部分に移動させる必要がある。


そもそも、ルーペで一部だけを円形に拡大したいのではなくて、見にくい部分が画面の中心となるように全体的に拡大したいのにそのための操作が煩雑すぎる。


そういう意味ではマルチタッチって凄いんだなぁと改めて感心する。



また、iPad用のコミックビュアーは人気カテゴリーで売上も凄いらしく、それぞれのアプリが他とアプリとの差別化のためにしのぎを削っている。


デザインやUIが洗練されていることは言うに及ばず、青空文庫形式対応だとか、Dropbox連携だとか、表紙のサムネイル表示だとか、ページ移動のときのサムネイル表示だとか、ページ先読みによるページめくりの高速化だとか、本当、凄い。


それも、機能強化によって売上が変わってくるから、アップデートも頻繁にある。そして新しいバージョンが公開されるとiOSが通知してくれ、iOSのアップデート画面からアプリを新しいバージョンに一括更新してくれる。


それに比べて、PC用のフリーウェアはどうだろう。


「自分が使いたいような×××のソフトが無かったので作りました。」
「文句言うなら使わないでくださいね。文句言う人は自分で作ればいいじゃないですか。」
「こっちは仕事の合間縫って作ってるんですよ?要望には一切対応できません。」
「アップデートは私のサイトに頻繁に見に来て、新しいバージョンがあれば前のバージョンをフォルダごと消して差し替えてくださいね!」
「前のバージョンを消さずに上書きした場合、設定ファイルが前のもののままになるので起動すらしませんよ!ちゃんと書いてある通りにしてくださいね!」
「ウイルス?そんなの知りません!市販の信頼できるアンチウイルスソフトをインストールして自分でチェックしてくださいね!」
某巨大掲示板で無理な要望ばっかり書く人がいたので公開中止しますね!こっちは善意で公開していただけですからね!」
「フリーウェアなのにそんなこともわからず無理な注文ばっかりする人がいるのでもうサイトも閉鎖しますね。バイバイ!」


フリーウェアなのだから、それでもいいと言えばいいのだが、iPadのアプリとはあまりにも温度差がある。


ユーザーにしてみれば、無料でそこそこ使えることが大事なのではなく、数百円であれば有料でもいいから、ユーザーのためを本当に考えて、UIまでよく考えて練ってある、最高の使い心地を提供してくれる、不具合があればすぐにアップデートで対応してくれ、同種のアプリとの差別化を図るため機能強化に本腰を入れて惜しみない努力をされているアプリが必要なのではないかと。


iPadを使うようになってから特にそのことを強く意識するようになった。



■ 追記(2011/07/01 9:30)


twitterのコメントに返信。


*1


例えば、PC用で
・数百円で購入できる
・年に数回のアップデートをしている
iPad用のコミックビュアーに(機能面で)匹敵する
これらの条件を満たすコミックビュアーって何があるでしょう?


そもそもPC用に数百円でそんなソフトを開発することはマーケット規模的に見て不可能だと思うのですよ。つまり、そんなシェアウェアのマーケット自体が存在していないわけです。


存在しないもの(PC用コミックビュアーのシェアウェア)を、存在するもの(iPad用のコミックビュアーの有料アプリ)と比較することは出来ません。


これは、コミックビュアー以外についても言えることで、PC用のシェアウェアとしては販売本数の問題からビジネスとして成立しないような商品でもiOS用ならビジネスとして成立することは多々あるのです。


ですから、そういう分野においてはどうしてもPC用の無料ソフトとiOS用の有料アプリとを比較せざるを得ないわけです。


つまり、「PC用フリーウェア vs iOS用有料アプリ」や「無料 vs 有料」という構図ではなく、「×××を目的としたアプリに関して、PC用とiOS用とで比較」しようとしたとき、PC用はフリーウェアしかなく、iOS用は有料アプリしかなく、そしてそのアプリの質や開発側の姿勢に明確な差があるということは十分ありえるのです。


そして、そういう分野においては、「ユーザーが求めているのはほとんどのケースにおいてiOS用のアプリのほうじゃないのか」と私は思うのです。