オンラインRPGのギルド戦という悪夢


普通、オンラインRPG(MMORPG)にはギルド戦があってギルド対ギルドで戦う。


ゲームシステム上、人数制限のないギルド戦の場合、たくさんの人員を集めたほうが圧倒的に有利になる。
相手のギルドのプレイヤーを1対Nでタコ殴り状態に出来るからだ。


プレイヤー人口の多い人気ゲームだと100人規模の人手を集めなければ勝てない。
この人数を集めるのがまた大変だ。特に主戦力となるキャラクターレベルの高いプレイヤーは中高生に分布している。


彼らは人の言うことをあまり聞かない。会社なら給料もらってるわけだし、大学を卒業していれば大学教養程度の知識はあるだろうし、また社員は会社に属している以上、原則上司の言うことを聞くだろうけど、こいつらはそうじゃない。フリーダムの権化だ。おまけに小中学生なんかだと世間の常識が全く通用しない。


「そんな奴らは仲間にしなければいいだろ」と思われるかも知れないが、中高生のほうが一般的に言って社会人より自由な時間があるので、長時間ログインしており、レベルが上がるのが圧倒的に早い。夏休みなんかだと特にそうだ。高いキャラクターレベルのプレイヤーが一番多く分布しているのがこの年齢層なのだ。


礼節のしっかり出来た、人当たりのいい、ムードメーカー的な社会人のプレイヤーも居る。しかし、彼のキャラクターのレベルは低く、装備が紙(紙のように薄い防御能力)で、ギルド戦においては一撃で沈んでしまう。さらに、ギルド戦の時間は毎週決められているのに「その日は残業でログインできるか怪しいです。」とか言い出して、結局、彼はギルド戦の時間にログインすら出来ない。


彼は人柄が良く、リアルでも酒を飲み交わしたいぐらいの好漢なのに、ことギルド戦において彼は直接的には何の役にも立たない。彼の力はあまりに無力だ。それがオンラインゲームの世界の現実なのだ。


そんなわけで必然的に物の道理のわからない礼儀知らずな小中学生に社運ならぬギルド運を全面的に託さなねばならないという屈辱的な状況になる。


これが映画なら、主人公は「おいおい、まさかこんな奴らに俺たちの命運を託さなければならないのかい?」だとか「こいつらが主戦力だって?ついこの間までママのおっぱいをしゃぶっていたようなガキ共じゃないか」だとか言うところだろう。


それは、まさに幼稚園児たちの操縦するタイタニック号だ。悪夢以外の何物でもない。


そんな100人規模の小中学生を管理するためにはギルド自体がきちんと組織として編成されていなければならない。いくつかの役割にわかれ、指揮系統が階層化されていなければならない。


しかし指揮系統の重要な役割を与えても相手は小学生だからギルド戦のまっ最中に「お母さんがお風呂入れってうるさいから落ちますwww」とかチャットウィンドウに一方的に言い残して勝手にログアウトしていく。ちょwwおまw待てってwww


こんな感じの小中学生を100人もきちんと管理できるんなら、社会人の部下を500人ぐらい管理するほうがたやすいかも知れない。こんなギルドの維持は、会社を維持するよりずっとずっと骨が折れる。


いま当時のこと(8年ぐらい前)を振り返ってみても、私にとって、それはまさしく悪夢の一つと呼ぶにふさわしい出来事であった。