日本沈没


日本沈没 1 (ビッグコミックス)

今回の震災に関して、私は取引先が少し被害に遭った程度なのだけど、なんだか無性に小松左京日本沈没〈上〉 (光文社文庫)のコミック版(→ 日本沈没 1 (ビッグコミックス) )を読みたくなって、途中までむさぼるようにして読んだ。


そのなかで、「深夜、車を走らせていると、車が近づいているにも関わらず逃げようともしない小動物に出くわすことがある」という小話がある。あの小動物は、近づいてくる車のヘッドライトに見とれているのか、そもそも、「逃げなければならない」ということ自体を知らないのだろうか。


動物というのは、本能的に身の危険を察知できるはずなのに、命の危険を省みず、車のヘッドライトに見とれているのだとしたら、その動物には何のためにそのような本能が組み込まれているのだろう?


この物語では、海底地震が発生し、沿岸部で潮がさーっと引いていくのを不思議に思ったカップルや観光客がその様子を携帯で動画を撮ったり、twitterで「潮が引いてくなう」とかつぶやいたりしてる(?)シーンがあるんだけど、大津波が来てみんな飲み込まれてしまう。


潮が引いていくのを見てすぐに避難していれば助かったかも知れないのに、彼らはその光景に魅入られてしまったのだ。


それが津波の来る兆候じゃないかと思った人も中には居たというのに、みんながあまりの美しさに魅入られているときに、「逃げろ!」と叫ぶことはとても恥ずかしい行為じゃないかと思い、また、この場でそんなことを言っても誰にも聞き入れられないのではないかと思い、そして、自分のほうが間違っているのではないかと自分を納得させ、「逃げろ!」と声に出して言うのを躊躇った。その結果、彼らは一様に大津波に飲み込まれてしまう。


この物語には、そのような極限状態における集団心理の非合理性を皮肉るかのようなシーンが幾度となく出てくる。それがしかし圧倒的な説得力を持っている。


震災なんか人ごとだよと思ってる人は、是非この本を読んで、震災についてよく考え、被災地の人のために寄付でもしてもらいたい。