AI将棋のインタビューがひどすぎる件


AI将棋 Version 17 for Windows DVD版Windows 7のマルチタッチ対応になり、そのインタビュー記事がMicrosoft公式サイトに掲載された。


Windows 7 マルチタッチ対応】AI将棋Version 17 - タッチは思考を阻害しません
http://www.microsoft.com/japan/powerpro/TF/interview/38_1.mspx


ところでこのインタビュー記事の内容がひどすぎる。

・ やはり将棋ソフトは強さが人気の秘訣なのですか?


もちろん、箔が付くという面はあります。
例えば「AI将棋」はアマ 4 段の認定を将棋連盟から頂いています。
しかしながら、強さで言うと、実は現在、世界中の将棋ソフト全体が課題を抱えているといえるのです。


・ どういうことですか?


思考エンジンの現在のトレンドが、データベース参照型になっているということです。手を決定する場合、金の位置、飛車の位置、角の位置などの大駒の位置をメインにして、一番近い棋譜はないか? という、現在の局面に一番近いデータをプログラムが検索します。そこから最善手を見つけるのです。この手法であると、プログラマーは、必ずしも将棋に精通していなくてもよくなります。データベースの検索ルーチンに通じていればよいわけですね。
ただし、このやり方は、結局人間が行なった対局データを元にしているわけですから、決して人間を超えられなのです。今は良いのですが、その先をどうするか? が課題といえます。

ひどい。ひどすぎる。どうやればこんな嘘八百を並べられるのだ。


弱い人の対戦棋譜からだけBonanza Methodで学習させてもそれより強いコンピュータ将棋ができあがる。「人間が行なった対局データを元にしているわけですから、決して人間を超えられなのです。」だなんてことは決してない。


それに、「データベース参照型」とは何だ。配列のルックアップが「データベース参照型」か?配列は「データベース」か? 例えば、int a[3] = { 1 , 2 , 3 }; これがデータベースか?


配列を参照するプログラムを書いたことがあるからと言って、どこかの会社の面接で
俺  「データベースを扱うアプリを書いたことがあります」
面接官「それは何のデータベースのシステムを使いましたか?MySQLですか?」
俺  「自前のデータベースです」
なんて言うのだろうか?


それに「一番近い棋譜はないか? という、現在の局面に一番近いデータをプログラムが検索」なんてことは絶対にしない。そんなことを現実的な速度で出来るわけないだろう。それとも何か。AI将棋では秒間数百万回の曖昧検索のqueryが処理できる超・超・超高速なデータベースを採用しているとでも言うのか。


また、「データベースの検索ルーチンに通じていればよいわけですね。」って、コンピュータ将棋を作るのに超・超・超高速なデータベースシステムを設計する力が必要みたいに言わないでもらいたい。いまのコンピュータ将棋に必要とされているのは、棋譜からパラメータを学習するためのメソッドだ。それはデータベースシステムの設計とは全く違うものだ。


もしかしたら、プログラムのわからない人のために何か比喩のつもりで言っているのかも知れないが、比喩なら比喩であると事前に前置きすべきだ。それに、「ゲーム木の探索」と「データベースの検索」とは全く別のものだ。いまのコンピュータ将棋は定跡部を除いて、棋譜とのマッチングなんか一切やっていない。そんなことは現実的な速度では出来ない。類似棋譜とのマッチングを行なって、その棋譜の指し手を元に最善手を決めるかのような言い方は比喩としても全く相応しくない。比較すべきそんな棋譜は実際はどこにも存在しないのだから。


このインタビューに答えている人たちは、わからないならわからないで、もう少し謙虚に、思考ルーチンの内容について担当プログラマに確認するぐらいのことをすればどうかと思うのだが。天下のMicrosoft公式サイトで全世界に向けて自分たちは無能ですと言わんばかりのこんな恥さらしなインタビュー記事を掲載してこれで本当に商品の宣伝になると思っているのだろうか。