ダライアスには苦い思い出しかない


ダライアスが出たのは、TAITOが台頭たいとうしてきた私が中学生のときだった。


当時、ちょうどLD(レーザーディスク)のゲームが流行っていて私にゲームを面白さを教えてくれようとした友達のK君は、「忍者ハヤテ」を私に勧めた。


K君は学校の勉強そっちのけで一日中ゲームをしており、学校の成績は下から数えて何番目というところだったが、ゲームのことだけはとにかくめっぽう詳しかった。私は学校の成績の悪いK君のことを口では馬鹿にしながらも、内心、自由奔放なK君が少し羨ましかった。


ゲーム三昧のK君は「忍者ハヤテ」をワンコインクリアできたのだが、私は横で見ていても操作を覚えきれない。何度か通しでクリアまで見せてくれたのだが、


K 「まだ覚えられへんの?」
私「覚えられへん」
K 「やってみる?」
私「やってみいへん」
K 「なんで?」
私「50円あったら、うまい棒5本も買えるやん。チロルチョコなら5個買えるし。20円のおかしと30円のお菓子だって買える。40円と10円でもいいな。1個50円のお菓子は高いからいまだかつて買ったことはない」
K 「そんなん聞いてへん」


とまあ、いつもこんな調子で見てることのほうが多かった。


ある日、K君とゲーセンに行くとダライアスが入荷されていた。そこはパチンコ屋の地下にある薄暗く薄汚いゲーセンだった。そこには頑固そうな店番のおっさんが一人しかおらず、しかもその店員は上のパチンコ屋の店員を兼務しており、ときどきしかゲーセンを見に来ない。


初めての三画面筐体ということでわくわくしながら、K君は100円を投入した。K君には母親はおらず、毎月父親から食費込みで数万円もらっているらしく、食費を削ってゲームに費やしていたので中学生のわりには比較的お金を持っていた。


K君は、ダライアスは初回プレイなのに3ステージ目まで進んで、さすがK君だと思った。


それを見ていた私は面白そうなので、100円は、大金だったけど自分でもやってみることにした。なけなしのお小遣いである100円を投入したが、なんとクレジット音がしない。流れたのだ。当時の筐体はコインシューターの精度が悪く、よくコインが流れた。


店長を呼んできたが、店長は「ほんまか?」と疑っている。
私とK君は「ほんまや」と連呼。店長は信じない。


「ほな試しに100円入れてみるで、流れるか?」と言いながら100円を投入する店長。そういうときに限って流れない。「ほら、流れへんやろ。ちゃんと入るやろ。自分ら嘘ゆうてるやろ?」完全に嘘つき呼ばわりする店長。「嘘やない。ほんまや」と私とK君。「ほんまか?」「ほんまや!」「ほんまにほんまか?」「ほんまにほんまや!」


「ほな、この1クレジット入れたんで、やったら(遊んだら)ええけどな、もう店来やんといてな」本当、とんでもない店長だった。


こんな精神状態でゲームをしても面白いはずもなく、夢うつつでゲームは終了。
私とK君は家路につき、べそをかきながら二人で遠吠えである。


K 「あの店員、ほんまむちゃくちゃやで」
私「あいつ、絶対ころしゅ」
K 「ほんまやで」
私「いつか、絶対ころしゅ」
K 「ほんまやで」
私「ころしゅ、ころしゅ、絶対ころしゅ」
K 「ほんまやで」
私「ころした後、100円返してもらう」
K 「それはどうかな…」
私「……」


まあ子供のことなので次の日にはそんなこともケロっと忘れてはいたのだけど、それ以来、私とK君はそのゲーセンに行くことはなかったし、ダライアスを二度とプレイすることもなかった。そんなことを下の動画を見ながら思い出した。

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