将棋方程式を発見した!(11)

yaneurao2008-05-25



最近のトレンド(?)として、GA将!!!のように二駒の相対的な位置関係を評価しようとする試みがある。


普通、自玉と周辺の自駒(守り駒)、自玉と敵駒(敵の攻め駒)との関係を評価する。これは将棋は厚みを削り合うゲーム(→将棋方程式を発見した!(1) http://d.hatena.ne.jp/yaneurao/20080406)なので、それを真っ先に評価するのは当然である。


しかし、それらの駒の2駒の相対位置は直接的に形勢に関与するのだろうか?これはとても難しい。私もかねてから興味があり、いろいろ思考実験をしているのだが…。私の現在の認識を正直に以下に書いておく。


■ 自駒の2駒の相対的な位置関係が形勢に関与するパターン


1) 王と金との相対的な位置関係


王と金は周辺8近傍に対してもっとも利く駒である。王は8近傍のうちの8箇所、金は8近傍のうちの6箇所に利きがある。囲いの堅さではなく広さを主張しようとする場合、王の周辺25近傍になるべくたくさんの利きを発生させたほうが良い。


そのためには王と金が隣接していると利きが重複して損をする。王と金は一枡開けて配置したほうが良い。中住まいで金を玉から一枡あけて左右に配置するのはこの理由による。


しかし、これは王と金という王との相対的な位置関係に含まれそうな気も少しする。また、囲いが堅さを主張する囲いなのと広さを主張する囲いなのかでは王と金が一枡離れていることをプラスとして扱っていいのか意味が変わってくる。そのへんを考慮した上でないと副作用が怖いとは思う。


2) 飛車と金との相対的な位置関係


これは飛車も王と同じく価値の高い駒なので飛車をとられにくくする必要がある。飛車をとられにくくするには飛車に自駒の利きを利かせれば良いと言うわけでもなく(取られた時に取り返せるようにはなるだろうが、価値の低い駒で取られてそれを取り返せても嬉しくはない)、飛車の周辺に打ち込まれる手を防いでおく必要がある。


そのためには飛車の利きのない場所に自駒を利かせたほうが良い。飛車は8近傍のうち4箇所にしか利かない駒なので、残りの4箇所をカバーしているほうが良い。この4箇所は、飛車を下段に引けば2箇所のカバーで済む。その2箇所は玉や金などの8近傍にたくさん利く駒を利用したほうが少ない駒数でカバーできる可能性が高い。


そういう意味では右図のように王の利きで飛車の斜め上をカバーする右玉は理にかなっている。


3) 金と金との相対的な位置関係


金と金が一枡離れて並んでいると銀を割り打ちされる可能性が出てくる。その後、銀は取り返せるとしても金と銀の交換は損なので、この形自体が損なのだ。同様に飛車角が横に並んでいる形も角の頭に銀などを打たれて両取りになるので良くない形だろうし、王と飛車がひとますあけて横に並んでいる形も桂馬で両取りがかかるので良くない形である。


しかし両取りは、両取りをするために駒を打つ空間が必要である。その空間がふさがっているか自分の利きがあるなら両取りはかからないので、必ずしも悪い形とは言えない。よって単なる相対的な位置関係ではなく、両取りがかかるかどうかも加味したほうが好ましいとは思う。


4) 価値の低い駒の相対的な位置関係


価値の高い駒は、それより価値の低い駒によって両取りを掛けられてどちらかをとられてしまう可能性があるので、価値の高い駒の相対的な位置関係は重要だと言うことがわかった。


逆に言えば、桂・香・歩のような駒の相対的な位置関係はあまり意味がないと思える。実際のところ、(私の感覚では)あまり形勢に影響しないと思う。


ただ、銀の進路・退路があるかなどは重要で、退路や進路を歩が邪魔しているなら、これは形勢に影響を与える。これは銀と歩との相対的な位置関係というよりは、銀の機動性をどう評価するかという問題のようにも思える。


■ 自駒と敵駒の相対的な位置関係


1) 当たりの強さ


「と金」は攻め駒として敵の厚みを削るために使うなら、敵の駒と交換することになるので、その当たりの強さによって「と金」自体の評価が変わってくる。


当たりの強さと言うのは、敵の価値の高い駒が近くにたくさんあるほうがそのうちのどれかと交換できる可能性が高く、このとき「当たりが強い」と言う。


そういう意味では、自駒の攻め駒とその周辺の敵駒との位置関係は重要である。


ただ、「当たりの強さ」という観点で評価するなら、自駒のひとつとその近くの敵駒3つぐらいで評価したほうがいいような気はする。


2) その他


いろいろあるが説明が長くなるので割愛。


■■ 結論


自駒の価値の高い2駒の相対的な位置関係は両取りがかかるかどうかという観点から形勢に大きな影響があると言えると思う。しかしこれは両取りという観点から陣形を評価したほうがいいような気もする。


自駒と敵駒との位置関係についても、当たりの強さという観点において形勢に大きな影響があると思う。しかしこれも、当たりの強さという観点から評価したほうが効率的で、より妥当な近似になると思う。


では、駒の相対的な位置関係は意味をなさないのかと言うと、そうとも言い切れず、「両取りの判定」と言うような個別の処理をいくつも入れるよりは包括的で、うまく機能するかも知れない。(要するにやってみないとわからない)