将棋方程式を発見した!(8)

yaneurao2008-04-30


昨日のエントリのコメントで小宮さんから以下のコメントをいただいた。

進歩本のtacosの章に、持ち駒の数で王の脅威を調整する手法が書いてありますが、なかなか上手く行きません……

「持ち駒が多いほうが王は詰みやすいのか?」と言う一見単純に見える質問でも正確に答えるのはすこぶる難しい。(私はその解答を持ち合わせていない。)


例えば今日の図は後手の手番なのだが、先手玉がどうやっても詰まない。


銀のように横に移動出来ない駒が千枚あっても詰まないという意味で「銀千枚」と呼ばれている形だ。金以外の持ち駒はほとんどあって先手陣は紙のように薄いのに後手から王手すらかからない。


同じく有効な王手がかからない局面を「ゼ」(「絶対詰まない」の頭文字を取って「ゼ」)とか「Z」とか呼ぶ。困ったことに将棋の終盤ではこれらの局面が比較的現れやすい。


銀千枚やZにおいて持ち駒の多さは全く無意味で、持ち駒を評価すればするほど間違った評価であり、終盤で下手に持ち駒の数を評価すると将棋の思考ルーチンとしては弱体化する。


問題図のような局面で持ち駒の多さが詰ましやすさに直結しないのは将棋が一度に2つの駒を打てないからだ。自分が1手指すと相手も1手指すし、1手の余裕が得られない。


私見では、終盤の入り口ぐらいでは駒が多いほうが寄せやすいと思うのだけど、終盤の寄せ合いでは駒の多い/少ないより詰みやすい形かどうかのほうが重要になってくると思う。


三輪誠さんの「SVMを用いた将棋の詰みの有無の予測の学習」*1は「詰みやすさ」を数値化すると言う意味で非常に興味深いのだけど、これを直接的にコンピュータ将棋に応用可能なのかどうかは私には良くわからない。


冒頭で(横に利かない駒が)いくら持ち駒があっても詰まない局面を紹介したが、その逆に持ち歩の数が1つ違うだけで詰む/詰まないの結論が変わってしまうことはしばしばある。このような局面において静的に評価することは困難である。その局面は、1歩が値千金である特殊な局面と言える。これは評価関数のチューンではどうにもならない。 将棋の終盤はそのように静的な評価関数では決して評価出来ない特殊な局面が頻出するのである。


とまあ、終盤に関しては毒にも薬にもならないことしか私には言えないのであった…。