救急車の乗り方 for ビギナーズ(5)


■ 搬送〜受け入れ


患者が怪我をするに至った経緯などを救急車のなかでいろいろ聞かれるだろうが、ほとんど隊長の興味本位応急処置のために必要な場合もあるので素直に話そう。


救急隊員は24時間体制を維持するために変則的なシフトにならざるを得ない。同じ場所に救急車を呼べば、時間帯が以前呼んだときと昼と深夜など全く異なっていたとしても、前に来た隊員が一人や二人混じっていてもおかしくはない。救急隊員とは長い付き合いになることもあるので救急隊員の心証を害しないことも大切なことなのである。「またあなたですか」と言われないようにしよう。


病院についたあなたは、医師に救急隊長から話が詳細に伝わっていることを期待するだろうが、実際はほとんど何も伝わっていないという事実を知って愕然とするだろう。あれだけ事情を事細かに説明していた自分が馬鹿らしく思えるかも知れない。気を持ち直して、また最初から医師に話そう。


病院に担ぎ込まれた時間帯が深夜だと専門医がおらず、「詳しい診断などは専門の先生が出てこられてから」と言われるかも知れない。あなた、もしくは患者本人は同じ話を何度も何度も違う先生にしなければならないかも知れない。彼らは情報が全く共有できていないし、インターンの奴らは興味本位で事情を聞いてきやがるそれぞれの専門的見地から突っ込んだことを聞きたいわけである。そこはさらなる忍耐を持って接していただきたい。


事情をひと通り医師に説明したあとあなたは待合室などで待機しているように指示されるだろう。真夜中である場合、付添い人としてもここで仮眠を取って体力を温存したいところではあるが、毛布も枕もないのでなかなかそうはいかない。(病院によってはタオルケットぐらいなら借りられる場合があるが。) 余裕があれば毛布と枕ぐらい家から持って行くのがベストソリューションであると思うのだが、いかがだろうか。


■ まとめ


近年、緊急医療が崩壊しているのは紛れもない事実である。病院側は受け入れたくても受け入れられないのが実状であり、それなのに病院叩きともとれる報道をするマスコミ*1は何か矛先を間違えているように思う。行政は税金をもっと投入してでも緊急医療施設の充実を目指すべきだろう。


こういう状況で、いまのあなたに出来ることとは何なのかを考えてみて欲しい。


例えば、家族に自分の病気のことを正確に知らせておくことは大切なことだろう。持病があるならば、事前にそれを整理して診察履歴をまとめておくおくべきだ。そして持病の内容を正確に家族に伝えておくべきだ。これが出来ていないと救急の時に的確な判断が出来ない。


また、救急車を呼んでもすぐに病院に運ばれるわけではないことは今回のことで十分に理解してもらえたはずだ。つまり、緊急時には家族による応急処置が非常に重要な役割を担うのである。かけがえのない家族を救うためにもいまのいまから勉強してはどうだろう?


応急手当 3訂版―これだけは知っておきたい図解 ひと目でわかる応急手当―災害・事故・急病から命を救う


■ 豆知識


・救急車以外の代替手段


タクシーももちろん代替手段の一つだが、実際タクシーだと不安があることも多い。最近では「介護タクシー」「民間救急車」といったサービスも存在する。会社によっては消防庁の指導を受けた職員が同乗したり、車内に酸素や除細動器などを常備しているところもある。


価格が高いし、まだ全国的にあるわけではないので気軽に…というまでは言えないと思うが、緊急を要しない場合の移動手段としては検討に値する。


もちろん、出血があったり、意識の混濁があったり、頭を打った、といった場合は迷わずに救急車を利用したほうが良い。


・#7119


東京で救急車を呼ぶか迷った際は、#7119 をプッシュ
http://www.ohmynews.co.jp/news/20070906/14828