コンピュータ将棋はプロ棋士に勝てるか?

3月21日にプロ棋士の渡辺竜王とコンピュータ将棋のBonanzaとの対局が開催された。 惜しくもBonanzaは負けたものの、かなりの善戦だったようだ。(大和証券杯特別対局 棋譜 渡辺竜王の自戦記 1 2 補足)


今回のBonanzaは、将棋倶楽部24のレーティングで2800。もはやアマチュアのトップと互角かそれ以上である。もはや互角以上に戦える人間は日本に100人程度しかいない。トッププロに勝つのも時間の問題だろう。かつて、小林秀雄が、その著書『考えるヒント』のなかで「機械に将棋が指せないのは、『常識』である」と述べて、常識のない世間の人を批判したが、いまどきそんなことを言おうものなら頭大丈夫かと心配されそうだ。


私は何か根本的なブレイクスルーが無いとプロ棋士には勝てないのではないかと思っていたのだが、実はそうでもないように思う。一言で言ってしまえば、将棋というゲームは、チェスほどでないにせよ、比較的局面の評価を数値化しやすい。これは私にとって、かなり予想外だった。将棋は大局観だとか、感性とかそういったものが必要で、ニューラルネットやらファジー理論やら強化学習やらそういったものを用いないとと根本的にどうしようもないように思っていた。


ところが、比較的単純な評価関数であってもたくさん先まで読めば、かなりの精度で局面を評価できるし、序盤でやや作戦負けになっても、圧倒的な終盤力があれば逆転できることが多い。プロ棋士でも読みぬけていたりポカしたりするので、いまのままのアルゴリズムでもマシンが高速になればプロ棋士にもある程度は勝てるのではないかと思う。