文脈干渉効果

Mind Hacks ―実験で知る脳と心のシステム



何らかの技能を獲得しようとするとき、自分を学習機械だと見立てることは大切だと思う。実際のところ、学習のメカニズム自体はブラックボックス的ではあるのだけど、それでも完全なブラックボックスではなくて、いくつかの原理が知られている。



たとえば、文脈干渉効果が挙げられるだろう。



私が小学生だった頃の漢字の書き取りは、漢字1文字を100回書いて…
それが終われば別の漢字1文字を100回書いて…といった機械的
反復練習でしたが(同じことをさせられた人は沢山いると思います)、
これは文脈干渉効果を引き起こす最も身近な例であるといえます。

漢字の筆順・読み方・意味などといった、習得しなくてはならない技能は
1文字1文字異なるはずです。それなのに同じ文字だけを繰り返し練習すると、
練習時の状況(=コンテキスト)と漢字を結びつけて覚えてしまうため、
【練習時と状況が変わると思い出せなくなる】という事態に陥りやすくなります。

自分の経験と照らし合わせて、「あー、あるある」と思う読者も多いだろう。ちなみに、文脈干渉効果を抑制するには、以下のようにするといいらしい。


この文脈干渉効果を抑制するには、ランダムな順序でいろいろな漢字を
選んで書く方法をとると良いといわれています。

この方法は記憶や技能が定着するまで時間はかかりますが、
練習にランダム性を導入するということで練習時の状況が毎回変わるため、
「覚えたい漢字」と「練習時の状況」を切り離すことができます。

漢字の書き取りでは、覚えなくてはならないことは漢字であって
練習時の状況ではありません。

この切り離しに成功すれば、状況が変わったとしても思い出しやすくなるのです。

このように、効果的な学習を行なおうと考えた場合、学習のメカニズムを知っていれば知っているほど有利なのである。そういう意味では、『MIND HACKS』は、読んでおいて損はない本である。