吐き気

突然東京に来いと呼び出された。それも手ぶらで行くわけにはいかず、そのための作業を前日深夜4時まで作業をして、少し寝たあとで始発の電車に乗り東京へ行ってきた。眠気で食事が喉を通らない。東京駅からタクシーに乗る。行ったところは、怖い怖いところで、こんなところで書くと大騒ぎになって、ゴメンナチャイの平謝りのもう二度と言いません!になるので書けない。


私は後ろの男性の電話の声に小便をちびらせそうになりながら、ガクガクブルブルしながら作業をしてタクシーを乗り継ぎそのあといくつかの会社を訪問した。


時間がないのでタクシーの運ちゃんに言って高速に乗る。雨が降っているので車の窓は閉め切ったままだ。帰ってからあれとこれとあの仕事を片付けて、この仕事に間に合うだろうか?不安が脳裏をよぎる。


空腹と疲労と眠気と冷や汗と密閉された車の空気、そして車の振動、外は暗闇、ついでに心のなかも真っ暗だ。「吐き気を催すにはこれ以上ないというほど素晴らしい条件だなぁ」とか考えていると本当に吐きそうになった。気分はゼンゼン素晴らしくなんかなかった。


ただ、「どうしてこんなことになってしまったんだろう」とだけ思った。いまそんなことを考えている場合じゃないのに。いまやるべき問題を直視せず、こういう事態に陥りにくい方法をいくら模索したとしても、いまそれをやるのは単なる現実逃避ではないのか?


大阪に終電で戻るとまだ雨は降り続いていた。
まるで誰かの悲しみを象徴しているかのように―――。