Lydian Chromatic Concept(1)

ピアノをやっているとふと気づく。1オクターブは12個のkeyで構成されている。1オクターブあがると周波数は2倍になる。1オクターブ下がると周波数は半分だ。keyはひとつあがると周波数は2^(1/12) ≒ 1.05946倍になる。1つ下がると、1/2^(1/12) ≒ 0.943874倍になる。


この1オクターブは12というのはどこから出てきたのだ?それに、どうして白鍵と黒鍵があるのだ?どうして白鍵にドレミファソラシド(C Major scale)を割り当ててあるのだ?そもそも、C Major scaleというtonality(調性)の根拠は何なのだ?


わからないことだらけだ。このへんをわからないまま、作曲の勉強をしようとすると、コード進行に始まり、two fiveに始まり代理コードやら裏コードやらU.S.T.やら転調やらモードやらに突入していく。すぐにお腹いっぱいになる。


転調と言っても、その調の調たるゆえんは何なのだ?
そんなわけで、ためしにC Major scaleについて考えてみる。


音には倍音が含まれる。周波数の倍の音、3倍の音、4倍の音..が含まれるというわけだ。ドの音と近親性のあるのは、ソの音で、2^(7/12) ≒ 1.498 ほぼ1.5とみなせる。同じオクターブに位置するドの音の3倍音とソの音の2倍音は同じ周波数ということになる。


この倍音の近親性から、ソの音からドの音へ移行していくことが多い。近代和声学はP5(完全五度)下降して解決しようとする傾向を理論の根幹においた。このことを前提とするなら、C Major scaleがもつ調的な重力は、ドではなくファにあるんじゃないか。これは、ジョージ・ラッセルの主張するLydian Chromatic Concept of Tonal Organizationだ。


このことを簡単に説明しよう。c(ド)からP5の累積を繰り返すと、c,g,d,a,e,h,fisとなる。逆順にするとfis,h,e,a,d,g,cだ。つまりfisからcまでの6つの完全5度で隔てられた7つの音の重力はcに向かっている。これらの音によって作られるのはG Major scaleでありC Major scaleではない。G Major scaleの中のcから始まり、I,II,III,#IV,V,VI,VIIという音程を持つ音階だからLydian scaleである。同様にC Marjor scaleはh,e,a,d,g,c,fというP5下降音列に置き換えられるのでfが終結点(Tonic)となる。このことからC Major scaleの事実上のTonicはfであると。


まあ、専門的になりすぎるのでジョージ・ラッセルについてこれ以上立ち入るのはよそう。このへんの議論に興味のある人には、「ブルーノートと調性」(ISBN:4118850508)あたりをお勧めしておく。


そんなわけで、「なんでP5下降なの?」だとか「tonality(調性)ってそもそもなに?」「オクターブはどうして12個のkey?」みたいな疑問の答えにはなっていない。作曲と言えばコードワークが中心だと思っている人もたくさんいるだろうけれど、コードワークでお腹いっぱいになっている人たちのためにそのへんについて書いていきたいと思っている。(つづく)