みっつ目は自分は呪われたプログラマであるということ(18)

FDD - track and sector


H君らを爆弾で吹っ飛ばすために2万円を稼がなくてはならない。私は、自分の開発したDIHプロテクト(double index holeプロテクト)でお金を稼ぐことを考えた。DIHプロテクト自体がお金になるとは本当のところ、あまり思ってはいなかった。ただ、いくらかでもお金になるのであれば、それでいいと思った。DIHプロテクトを馬鹿にしたH君らがDIHプロテクトによって稼いだお金によって報いを受ける。因果応報という言葉が自分の脳裏によぎった。


私はさっそくマイコン雑誌を見て大阪のソフトハウスに電話をした。小学生なのであまり遠くにすると、そこまで行くことすら出来ない。梅田や大阪日本橋であれば自転車で行ける距離だ。ひとつ目に電話したところでは、うまく話が進んで、


「それでそのプロテクト、5インチディスク1000枚にかけてもらうとしたら、いくらで?」


と聞かれた。恥ずかしい話だが、値段はまったく考えていなかった。そういった金銭感覚自体がなかったのだ。いま考えれば、開発に1週間×8時間×2000円=112,000円。プロテクトを施すのに一枚あたり、2分かかるとして、まあ50円ぐらいだろうから、1000枚だと5万円。それが実費だから、そこに営業利益を入れると20〜25万。ただ、開発コストは一回で償却しなくていいなら、まあ8万ぐらいでもいいか、みたいな計算が成り立つ。だから、まずは12万ぐらいで提示して、場合によっては8万までは下げようとか思うだろう。1000枚で12万なら1枚120円だし、向こうとしても出せなくはない範疇だ。


でも当時はそういう計算が出来ないものだから、ともかく自分の知っている大きな数字を言ってみた。


「ひゃ、、ひゃくまんえんで」


ひゃくまんえんは、自分にとって、大きな数字の代名詞であった。「指きりげんまん嘘付いたら針千本飲ます」の「針千本」に相当するのが「ひゃくまんえん」であった。「その約束、ぜったい?うそやったらどうする?」「うそやったらひゃくまんえん」「ほんまやな」「うん、ほんまにひゃくまんえん」 それが「ひゃくまんえん」という言葉の持つニュアンスであった。(つづく)