メールは電子の海に消ゆ


以前、将棋のプロ棋士の神吉先生と仕事でご一緒させていただいたときに、神吉先生に私が送ったメールが届いていなかった。私が手入力した神吉先生のメアドが間違っているのか?ということになって、その場でメールを私が神吉先生に送ってみた。その場で神吉先生がメーラーで受信していただいたのだが、やはり届かない。


どうもおかしいなと思い、私が神吉先生のOutlookの設定を確認したところ、スパムを自動判定するになっていて、迷惑メールフォルダに入ったメールは自動的に(即座に)削除する設定になっていた。また迷惑メールの判定レベルは「高」で運用されていたので、差出人セーフリストに入っていなければかなりの確率で迷惑メール行きだ。これには私も白目をむいた。



私 「神吉先生!この設定ですと迷惑メールに判定されてしまった場合、メールが届いたかどうかすらわかりませんよ。」
神吉「迷惑メールのフォルダに迷惑メールがどんどんたまっていきますでしょ。どうせたまってきたら見ずに消すのですから、それなら即座に削除したほうが合理的なのでは。」


なんかそんな感じの押し問答になって、結局、迷惑メールと判定されたメールを自動削除する設定を変更してもらうことは出来なかった。私が神吉先生にお送りしたメールはすべて迷惑メール判定され、即座に電子の海へ消えて行っていたのだ。差出人セーフリストに私のメアドを登録してもらわない限り、未来永劫、私のメールはすべて電子の海に消え続けることだろう。


つまり神吉先生にメールを読んでいただくためには、まず電話をして「このあとメールをお送りしますので、差出人アドレスxxx@yyy.com を差出人セーフリストに登録してください」とお伝えしたあと、登録してもらわなくてはならない。そうして登録してもらって初めてメールがこちらから送信できるという、一見さんお断り!なメールシステムなのだ。


その一件以降もそういうことはしばしば起きて、その都度「新しく、私の部下のメアドであるzzz@www.comをセーフリストに加えていただきたく」だの何だのそういうやりとりをしなければならなかった。まるで会員制のキャバクラだ。



しかし、こういう手順を経ることでメールをやりとりする人の輪が人づたいにしか広がっていかないのならば、ずっと健全なコミュニティが維持できるのかも知れない。どこの誰かもわからない人からのメールは受信することはないのだろうから。


神吉先生ほどの有名人なら、そういうのもアリなのかも知れないなと思った。

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