アナロジーは簡単ではないという話





思考する言語〈中〉―「ことばの意味」から人間性に迫る (NHKブックス)

Steven PinkerのThe stuff of thoughtsにおもしろいクイズがあったので紹介してみたいと思う。


ヒマラヤの山奥のある宿屋には、主人と年配者と若者が行う茶の儀式がある。まず主人が格の低い方から順に三つの作業 - 火に薪をくべ、茶を出し、詩を吟ずる - を行う。この儀式は何度もくり返されるのだが、一つの儀式が終わるたびに、誰でも「貴殿に代わり、次は私にこの難儀な仕事をやらせていただけますか?」と申し出ることができる。ただし、前の人が行った中でもっとも格の低い作業しか代わることができない。また、ある作業を終えた後にそれより格の高い作業を行うことはできない。儀式の最後には三つの作業をすべて若者が行わなければならない。さて、どうすればよいか?

http://d.hatena.ne.jp/atsushieno/20090914/p1


私には訳文がひどすぎて、書かれている意味がさっぱりわからなかった。何度読んでも「儀式」の定義がよくわからない。1回の儀式がどこからどこまでなのか?儀式に並列性はあるのか?同じ作業を2回続けてやっていいのか?儀式を複数回繰り返したものも儀式なのか?作業を引き継ぐのは引き継ぐ人の儀式の一部なのか?儀式はどういう条件で終了するのかetc..。そもそも、年配者と若者はそれぞれ複数いるのか、単数なのか。


この問題文を意味をとらえやすくするため、次のように書きなおす。書き足した部分が [ ]。


ヒマラヤの山奥のある宿屋には、[ひとりの]主人と[ひとりの]年配者と[ひとりの]若者が[三人で]行う茶の儀式行事がある。


[この行事のなかでは、次の儀式が何度も繰り返される。]


[この儀式で行なわれる作業には、三つの作業がある。作業には、格の高い、低いがあって、格の低い方から順に書き出すと、「火に薪をくべる」、「茶を出す」、「詩を吟ずる」である。]


[この行事は、]まず主人が格の低い方から順に三つの作業 - 火に薪をくべ、茶を出し、詩を吟ずる - を行う[ところからスタートする]。


[このとき、主人の手持ちの作業は、「火に薪をくべる」、「茶を出す」、「詩を吟ずる」の3つである。]


この儀式は何度もくり返されるのだが、一つの儀式が終わるたびに、誰でも「貴殿に代わり、次は私にこの難儀な仕事をやらせていただけますか?」と[作業の引き継ぎを]申し出ることができる。[て、作業を引き継ぐことが出来る。]


ただし、前の人が行った中で[前の人が手持ちの作業のうちで]もっとも格の低い作業しか代わる[引き継ぐ]ことができない。


また、ある作業を終えた後にそれより格の高い作業を行うことはできない。[「自分の手持ちの作業のうち一番格の低い作業」より「格の高い作業」を誰かから引き継ぐことは出来ない。]


[誰かに作業を引き継いだ場合は、その作業は自分の手持ちではなくなる。]


儀式行事の最後には三つの作業をすべて若者が行わなければ[手持ちの状態にしなければ]ならない。さて、どうすればよいか?


という意味である。これなら、解けるだろうか?


以下、解答。

続きを読む